講演情報
[R4-5]大腸癌に対する腹腔鏡手術後の腹壁瘢痕ヘルニアのリスク因子の検討
小森 孝通, 笹生 和宏, 内山 優史, 加藤 雅也, 麻本 翔子, 住本 知子, 遠矢 圭介, 橋本 和彦, 岸 健太郎, 福永 睦 (兵庫県立西宮病院外科)
【背景】腹壁瘢痕ヘルニア(incisional hernia:IH)は,大腸癌の腹腔鏡下手術においても比較的多くみられる術後合併症のひとつである.整容性やQOLに影響を及ぼすうえに,治療は全身麻酔下での手術となり患者の負担が大きく,その発生頻度を減らす対策が求められている.
【目的】当院における腹腔鏡下大腸癌切除術後のIHのリスク因子を明らかにし,有棘連続縫合糸による閉腹の有効性を検討する.
【方法】2020年1月から2023年3月までに,当科で腹腔鏡下切除術を施行した大腸癌症例のうち,CTにて術後1年以上の経過観察ができた症例について,IHの発生と臨床病理学的因子の関連を後方視的に検討した.
手術時の小開腹は臍部におき,閉腹は創直下に癒着防止材を貼付後,2022年3月までは腹膜・腹直筋鞘を抗菌性モノフィラメント吸収性縫合糸で結節縫合,2022年4月以降は抗菌性モノフィラメント吸収性有棘連続縫合糸で連続縫合し,皮膚は埋没縫合した.術後のIHの有無はCTで診断した.
【結果】全216例のうち,IHは24例(11%)に認められた.年齢・性別・PS・BMI・喫煙歴・糖尿病・ステロイド内服・抗血栓剤内服・術前アルブミン値・開腹手術歴・腫瘍の局在・腫瘍の大きさ・腹腔鏡/ロボット手術・硬膜外麻酔・手術時間・出血量・癌の進行度・根治度・術後創感染・術後の化学療法・ベバシズマブ投与などの因子について検討した.
単変量解析では,75歳未満・BMI25以上・ASA-PS 1/2がIHの有意なリスク因子(p<0.05)となり,有棘連続縫合糸の使用の有無での違いは認められなかった(p=0.81).多変量解析では,BMI25以上(HR:4.0,95%CI:1.5-10.5,p=0.0053)とASA-PS 1/2(HR:3.7,95%CI:1.1-12.3,p=0.031)がIHの独立したリスク因子として抽出された.術後創感染については,有棘連続縫合糸の使用の有無で有意差は認められなかった.
【結論】当院の検討では,BMI25以上とASA-PS 1/2がIHのリスク因子であり,有棘連続縫合糸による閉腹はIHのリスクを減少させなかった.今後は,さらにIHを減少させる対策が求められる.
【目的】当院における腹腔鏡下大腸癌切除術後のIHのリスク因子を明らかにし,有棘連続縫合糸による閉腹の有効性を検討する.
【方法】2020年1月から2023年3月までに,当科で腹腔鏡下切除術を施行した大腸癌症例のうち,CTにて術後1年以上の経過観察ができた症例について,IHの発生と臨床病理学的因子の関連を後方視的に検討した.
手術時の小開腹は臍部におき,閉腹は創直下に癒着防止材を貼付後,2022年3月までは腹膜・腹直筋鞘を抗菌性モノフィラメント吸収性縫合糸で結節縫合,2022年4月以降は抗菌性モノフィラメント吸収性有棘連続縫合糸で連続縫合し,皮膚は埋没縫合した.術後のIHの有無はCTで診断した.
【結果】全216例のうち,IHは24例(11%)に認められた.年齢・性別・PS・BMI・喫煙歴・糖尿病・ステロイド内服・抗血栓剤内服・術前アルブミン値・開腹手術歴・腫瘍の局在・腫瘍の大きさ・腹腔鏡/ロボット手術・硬膜外麻酔・手術時間・出血量・癌の進行度・根治度・術後創感染・術後の化学療法・ベバシズマブ投与などの因子について検討した.
単変量解析では,75歳未満・BMI25以上・ASA-PS 1/2がIHの有意なリスク因子(p<0.05)となり,有棘連続縫合糸の使用の有無での違いは認められなかった(p=0.81).多変量解析では,BMI25以上(HR:4.0,95%CI:1.5-10.5,p=0.0053)とASA-PS 1/2(HR:3.7,95%CI:1.1-12.3,p=0.031)がIHの独立したリスク因子として抽出された.術後創感染については,有棘連続縫合糸の使用の有無で有意差は認められなかった.
【結論】当院の検討では,BMI25以上とASA-PS 1/2がIHのリスク因子であり,有棘連続縫合糸による閉腹はIHのリスクを減少させなかった.今後は,さらにIHを減少させる対策が求められる.