講演情報

[R6-3]クローン病手術における術後合併症の予測因子としてのE-PASS scoring systemの有用性

角田 潤哉, 茂田 浩平, 森田 覚, 清島 亮, 岡林 剛史, 北川 雄光 (慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器))
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【目的】E-PASS(Estimation of physiologic ability and surgical stress)scoring systemは,消化器癌患者において,術後合併症の予測因子として有用であると報告されている.一方で,クローン病手術におけるE-PASS scoring systemの術後合併症の予測因子としての有用性は,いまだ確立させていない.そこで,クローン病手術におけるE-PASS scoring systemの術後合併症の予測因子としての有用性を検討した.
【方法】2006年1月から2024年2月までの期間に,当院で手術を施行したクローン病患者231例のうち,虫垂切除術や腸閉塞解除術を除外した229例を解析対象とした.術後合併症の発生(Clavien-Dindo classification grade≧II)を評価項目に各因子との関連性について検討を行った.
【成績】対象患者229例のうち,男性は170例,女性は59例であり,平均年齢は39.4±11.5歳であった.併存疾患に重症心疾患および重症肺疾患を有する患者はおらず,糖尿病は4例で認めた.Performance Statusの中央値は0[0-0]であり,American Society of Anesthesiologists physical statusの平均値は1.41±0.56であった.開腹手術は69例,腹腔鏡手術は157例,ロボット支援下手術は3例で施行され,鏡視下手術の開腹移行は21例で認めた.手術時間の平均値は285.9±124.7分であり,出血量の中央値は125[25-365]gであった.これらより算出されるComprehensive risk score(CRS)の中央値は-0.209[-0.384 - 0.114]であり,術後合併症の発生は57例で認めた.術後合併症の発生と各因子との関連性をLogistic regression modelで単変量解析を行うと,CRS,開腹歴,罹患期間,術前血清アルブミン値,術前血中白血球数が有意な相関を示した.CRSのcut-off値を,ROC curve analysisで算出すると,-0.132と求まった.上記の因子で多変量解析を行うと,CRS高値のみが有意な術後合併症の予測因子であった[Odds Ratio 3.05,95% Confidence Interval 1.50-6.19,p=0.002].
【結論】クローン病手術におけるCRSは,術後合併症の発症と有意な相関があり,E-PASS scoring systemは術後合併症の予測に有用である可能性が示唆された.