講演情報
[SY2-2]直腸癌手術におけるロボット支援手術と従来型腹腔鏡手術の短期・中長期成績の比較検討
加藤 岳晴, 塚本 俊輔, 永田 洋士, 髙見澤 康之, 森谷 弘乃介, 金光 幸秀 (国立がん研究センター中央病院)
【背景】当院では2014年から直腸癌に対するロボット支援手術を導入していたが当初は少数例に留まっていた.2018年の保険収載以後は適応拡大と術者の育成も行い,より症例数を増やしている.【目的】直腸癌に対するロボット支援手術(Robot)と従来型腹腔鏡手術(Lap)の短期および中長期成績を比較検討する.【対象と方法】2014年4月から2024年2月にcStage I-IIIに対して根治切除術を施行した直腸癌860例(Lap405例,Robot455例)を対象とした.傾向スコアによる重み付け(Overlap-weighting法)を行い,背景の偏りを調整し,2群間の短期成績(検討①)および中長期成績(検討②)を検討した.なお短期成績は,手術の標準化に伴う変化も検討するためRobot保険収載前までを前期(Lap 249例,Robot62例),以後を後期(Lap156例,Robot393例)に分けて検討した.【結果】背景因子調整前(Lap vs Robot)では,腫瘍主占居部位はRobotでRb例が多く(24.7vs58.2%,p<0.001),術前治療(1.5vs2.9%;p=0.255),術後補助化学療法(24.2vs28.8%;p=0.149)施行は有意差を認めなかった.観察期間中央値はLapで59.1ヶ月,Robotで24.6ヶ月であった.検討①:調整後の前期の短期成績は,手術時間はLapで短く(236vs288分,p<0.001),出血量はRobotで少なく(16vs10mL,p=0.003),術後合併症はClavien-Dindo(CD)grade≧2(17vs11%,p=0.314),grade≧3b(2.5vs5.9%,p=0.271)と差を認めなかった.一方調整後の後期では,出血量に差は認めないものの(16vs18mL,p=0.507),手術時間差は消失し(226vs244分,p=0.416),CD grade≧2(26vs16%,p=0.039),grade≧3b(6.7vs2.2%,p=0.035)のいずれもRobotで少なかった.また,縫合不全がRobotで少なかった(8.4vs2.7%,p=0.013).検討②:調整後の3年無再発生存率は86.6vs90.6%(p=0.076)であり,3年累積遠隔再発率は11.4vs8.5%(p=0.200)と両群間で有意差は認めなかった.しかし,3年累積局所再発率は2.9vs1.5%(p=0.038)とRobotで低かった.【結語】直腸癌に対するロボット支援手術は,手術の標準化と共に,腹腔鏡手術と比較して良好な短期成績であった.中長期成績については,累積局所再発率が低かったが,観察期間が短いことから今後も症例集積とフォローアップを継続しエビデンスを示すことが望まれる.