講演情報
[P18-1-7]腹膜播種による悪性消化管閉塞に対する高気圧酸素療法の有効性の検討
室屋 大輔, 岡本 健司, 金野 剛, 沖本 隆司, 又吉 信貴, 上原 智仁, 平松 俊紀, 野口 純也, 山吉 隆友, 新山 新, 井上 征雄, 木戸川 秀生, 伊藤 重彦 (北九州市立八幡病院)
【背景】腹膜播種による悪性消化管閉塞(Malignant bowel obstruction:MBO)は消化管の機能的・機械的閉塞という意味で麻痺性イレウスや癒着などによる消化管閉塞と病態は類似していると考えられる.手術治療が困難な全身不良患者も少なくなく,緩和的治療が導入される場合も多い.イレウスに対する高気圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy;HBO)の低侵襲性と効果は周知のとおりであり,今回我々はMBO症例におけるHBOの有効性を検討した.【対象と方法】2013年1月から2022年12月までに当院で腹膜播種によるMBOと診断された入院患者44例を対象とした.このうちHBOを受けた患者30例(HBO群)とHBOを受けていない14例(非HBO群)の予後を後方視的に検討した.【結果】HBO群と非HBO群の比較検討において,食事を再開できた患者の割合はHBO群で有意に高かった(93.3% vs. 71.4%,p=0.0486).全生存期間はHBO群で有意に延長した(MST3.0カ月 vs 1.5カ月,P=0.0274).手術を施行された患者の割合や,抗がん剤治療を受けることができた患者の割合に関しては両群間で統計学的に有意な差は認められなかった.追加として手術例を除いた症例に限った検討を行った.HBO群は21例で非HBO群は9例であった.これらで予後解析を行うとHBO群では有意に多くの患者が食事を再開することができ(95.2% vs. 66.7%,p=0.0349),全生存期間も延長した(MST2.8カ月 vs 1.3カ月,p=0.0077).【結論】HBOは腹膜播種によるMBO患者の食事摂取率を高め,予後改善に寄与する可能性が示唆された.