講演情報

[VPD2-1]回腸双孔式ストーマの合併症低減を目指して

松本 芳子, 竹下 一生, 塩川 桂一, 下河邉 久陽, 佐原 くるみ, 棟近 太朗, 長野 秀紀, 吉松 軍平, 長谷川 傑 (福岡大学消化器外科)
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【背景】
 回腸双孔式ストーマは直腸癌に対する前方切除後や縫合不全時のdiversion,閉塞を伴う進行大腸癌に対する術前治療や姑息的減圧といった様々な場面で用いられる重要な術式である.一方,回腸ストマにはoutlet obstruction(OO),high-output(HOS),parastomal hernia(PH)などの特有の合併症を伴う.本研究ではこれらの合併症の危険因子および因果関係を明らかにすることを目的とした.
 【方法】
 2016年4月から2021年9月までに回腸双孔式ストーマ造設術を受けた188例を対象とした.臨床因子と術後のストーマ関連合併症(OO,HOS,PH)をレトロスペクティブに解析した.ストーマ関連因子(腹壁の厚さ,ストーマのサイズ等)は,ストマ作成後のCT画像による測定値を用いて評価した.
 【結果】
 OOは28例(15.7%),PHは57例(32%),HOSは57例(31.8%)に発生した.CTで腹直筋レベルのストーマ縦径が小さいこと,およびストーマサイトが左側であることがOOと有意に関連していた.縫合不全時のdiversionはHOSに独立して関連していた.肥満,CTで腹直筋レベルのストーマ縦径が大きいことが,PHと有意に関連していた.OOの発生とHOSでは有意な関連が示されたが,OOとPHでは関連を認めるも有意差はなかった(P=0.071).
 この結果を元に,ストーマサイズをはじめとしたストマ造設の方法をいくつか変更した.その結果,研究期間中には15.7%であったOOの発生率が2.9%(3/105)に減少した.
 【結論】
 本研究は,回腸双孔式ストーマの合併症としてのOO,HOS,PHの主要な危険因子とその因果関係を検討した.また,当科で行っている合併症予防に留意したストーマ造設手技のビデオを提示する.