講演情報
[O20-7]GCT pedicleの内腹側挙上による横行結腸癌郭清戦略
原口 直紹, 南 壮一郎, 石川 慧, 古賀 睦人, 福田 周一, 額原 敦, 福田 泰也, 肥田 仁一, 木村 豊 (近畿大学奈良病院外科)
中血管領域を郭清範囲とする結腸癌手術では,解剖学的特性に合わせた郭清を系統的な血管処理と併せて行う必要があり,故に,他領域の大腸癌手術に比較すると難易度が高くはなるが,術者の戦略が如実に反映される面白い領域でもある.手術のポイントは,如何に静脈系の解剖を明確化させ,広い視野で安全・確実に郭清を完遂するかという点であり,当方では,挟み撃ち法を修飾したGCT pedicleの内腹側挙上による郭清アプローチを用いている.右側横行結腸癌の場合の本アプローチ法を簡略に示す.まず,頭側から腹側膵とRGEVの同定,十二指腸腹側の切開,肝湾曲部授動を行った後に,尾側からSMVを同定し,トライツに向けての膜切開を進める.MCAを切離後,頭側にSMA神経索に沿って頭側に郭清を進めるが,SMAとSMV間の線維束は保持し,GCT pedicleの内腹側挙上の際の支持組織とする.上行結腸無血管野から十二指腸腹側の剥離層へ開放し,GCT pedicleを内腹側へ挙上する.SMVの側腹からGCTの背側・膵前面の剥離と郭清を行い,ARCVを根部で切離する(この操作を容易とするために術者の右手用ポートは下腹部正中としている).GCT腹側からSMV腹側へと乗り換え,SMV腹側から膵背側へ入る剥離(線維方向により膵下縁を超えたことの認識が可能)を行い,MCVの根部処理を行う(内側片開きとなっているためMCV根部が広い視野で確認可能).その後,頭側から膵下縁で横行結腸間膜根の切離を行うが,SMV腹側の安全が担保される形となっている.MCA頭側の切離ラインを膵下縁につなげてCMEとする.体腔内吻合を併用すると,この肛門側の郭清領域の明確化が容易となり,さらに,追加授動や剥離・大網処理などの省略が可能となるだけでなく,臍切開創の縮小効果も得られる.また,無理な挙上による腫瘍への加圧・損傷などの腫瘍学的有害事象や出血の防止効果が期待されると考えている.挟み撃ちアプローチを修飾したGCT pedicleの内腹側挙上・ARCV先行切離は,CMEを行う上で,安全で有望な手術方法であると考える.