講演情報

[VSY1-3]横行結腸癌に対する腸管切離を先行した腹腔鏡下大腸手術

岡崎 直人, 平能 康充, 大和 美寿々, 芥田 壮平, 吉澤 政俊, 皆川 結明, 中西 彬人, 藤井 能嗣, 石山 泰寛, 平沼 知加志 (埼玉医科大学国際医療センター消化器外科)
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はじめに
横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術は,血管系の変異が他の部位と比べ多彩であるため郭清範囲の決定が複雑である.また十二指腸や膵臓などの重要臓器損傷のリスクなどを認め難易度が高い.当科では標本摘出用の小切開創を手術の序盤より活用し腸管の切離と精緻な処理が不要な手技を直視下に先行することで,周囲臓器との位置関係や郭清すべき血管の明瞭化および腹腔鏡下手術での中結腸血管周囲郭清を簡略化する試みを行っている.
手術手技
当科では,手術開始時に標本摘出用として臍部に3 cmの小切開を置きez accessを挿入して手術を開始.横行結腸切除術では,腸管と大網の間の切離や肝弯,脾弯曲部を授動し体腔外に挙上.病変から口側・肛門側に10 cmで腸管切離を先行する.さらに直視下に辺縁血管の切離と間膜処理を可及的に行った後,再度腹腔鏡操作に移行する.切離断端腸管を展開し,膵や上・下腸間膜静脈などの立体的位置関係や郭清すべき中結腸系の血管の走行の把握した上で郭清を行う.また右半結腸切除術では,回結腸動静脈の処理と上腸管膜静脈前面の郭清および肝弯曲授動した後に,体腔外で肛門側腸管と腸間膜を可及的に切離する.この操作により上腸間膜静脈前面の郭清施行部分と腸間膜切離部の間に存在する処理すべき血管が明瞭となり,処理すべき腸間膜根部への十分な緊張もかけやすくなることから,中結腸動脈根部周囲の郭清が安全かつ容易に行えると考えている.
結果
横行結腸癌に対し,2021年7月より導入し,これまで30例に対し腸管切離先行で手術施行した.女性16例,男性14例.年齢中央値72.5歳(46-91歳),術式は右半結腸切除術5例,横行結腸切除術25例でD2/D3リンパ郭清は3/27であった.手術時間中央値は182.5分(64-308分),出血は0 ml(0-155 ml),術後合併症(CD≧3)は認めなかった.
結論
腸管切離先行により,周囲臓器との位置関係および処理すべき中結腸血管系の走行の把握が容易となり郭清範囲が明瞭となることから,手術時間の短縮および安全かつ確実なリンパ郭清に繋がると考える.