講演情報
[SY2-5]直腸癌に対するロボット支援手術:傾向スコアマッチング法を用いたアプローチ別の検討
佐々木 和人, 野澤 宏彰, 室野 浩司, 江本 成伸, 金子 建介, 横山 雄一郎, 松崎 裕幸, 阿部 真也, 永井 雄三, 品川 貴秀, 舘川 裕一, 岡田 聡, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
背景:ロボット支援手術は直腸癌に対するアプローチ法として急速に広まっている.また,術前化学放射線療法(CRT)やtotal neoadjuvant therapyなどの周術期治療も本邦で普及しつつある.本検討では,直腸癌に対する手術アプローチとして,腹腔鏡と比較したロボットの有用性を明らかにすることを目的とした.
対象・方法:当科で2014年1月から2022年12月に腹腔鏡手術またはロボット支援手術を行ったcStage I-IIIの下部直腸癌(Ra,Rb)404例を対象とした.傾向スコアマッチング法を用いて患者背景(年齢,性別,BMI,cStage,術前治療の有無,術式,側方郭清の有無)をそろえ,ロボット群(152例)vs 腹腔鏡群(152例)の短期,長期成績について検討した.
結果:マッチング後のcStage(I/II,III:ロボット群 24/128,腹腔鏡群 25/127),術前CRTあり(ロボット群 80例,腹腔鏡群 77例),術式(LAR/ISR/APR,Hartmann:ロボット群 109/23/20,腹腔鏡群 108/23/21)やその他の患者背景因子に有意差を認めなかった.術後フォローアップ期間中央値はロボット群 38カ月,腹腔鏡群 51カ月であった.手術時間(側方郭清症例を除く)はロボット群で有意に長かったが(中央値 344分 vs 297分,p<0.01),術中出血量に差は認めなかった.LAR症例の検討では,肛門側切離端までの距離がロボット群で長い傾向を認めた(中央値 25mm vs 23.5mm,p=0.07).Clavien-Dindo分類 Grade II以上の合併症発生率(26% vs 28%,p=0.61)はほぼ同等であったが,ロボット群で有意にGrade III以上の合併症の発生が少なく(0.7% vs 4.6%,p=0.03),術後在院日数は短い傾向を認めた(平均 17.4日 vs 19.4日,p=0.05).長期成績では,5年全生存率(92% vs 91%,p=0.99),5年局所再発率(5.6% vs 3.9%,p=0.13),5年遠隔再発率(21% vs. 18%,p=0.50)と両群に有意差は認めなかった.
結語:本検討の結果から,直腸癌に対するロボット手術は腹腔鏡手術とほぼ同等の長期成績を示し,骨盤深部操作における技術的な優位性を有し,重篤な合併症を予防する可能性が示唆された.当科における新規ロボットシステム導入の取り組みも併せて提示する.
対象・方法:当科で2014年1月から2022年12月に腹腔鏡手術またはロボット支援手術を行ったcStage I-IIIの下部直腸癌(Ra,Rb)404例を対象とした.傾向スコアマッチング法を用いて患者背景(年齢,性別,BMI,cStage,術前治療の有無,術式,側方郭清の有無)をそろえ,ロボット群(152例)vs 腹腔鏡群(152例)の短期,長期成績について検討した.
結果:マッチング後のcStage(I/II,III:ロボット群 24/128,腹腔鏡群 25/127),術前CRTあり(ロボット群 80例,腹腔鏡群 77例),術式(LAR/ISR/APR,Hartmann:ロボット群 109/23/20,腹腔鏡群 108/23/21)やその他の患者背景因子に有意差を認めなかった.術後フォローアップ期間中央値はロボット群 38カ月,腹腔鏡群 51カ月であった.手術時間(側方郭清症例を除く)はロボット群で有意に長かったが(中央値 344分 vs 297分,p<0.01),術中出血量に差は認めなかった.LAR症例の検討では,肛門側切離端までの距離がロボット群で長い傾向を認めた(中央値 25mm vs 23.5mm,p=0.07).Clavien-Dindo分類 Grade II以上の合併症発生率(26% vs 28%,p=0.61)はほぼ同等であったが,ロボット群で有意にGrade III以上の合併症の発生が少なく(0.7% vs 4.6%,p=0.03),術後在院日数は短い傾向を認めた(平均 17.4日 vs 19.4日,p=0.05).長期成績では,5年全生存率(92% vs 91%,p=0.99),5年局所再発率(5.6% vs 3.9%,p=0.13),5年遠隔再発率(21% vs. 18%,p=0.50)と両群に有意差は認めなかった.
結語:本検討の結果から,直腸癌に対するロボット手術は腹腔鏡手術とほぼ同等の長期成績を示し,骨盤深部操作における技術的な優位性を有し,重篤な合併症を予防する可能性が示唆された.当科における新規ロボットシステム導入の取り組みも併せて提示する.