講演情報

[PD4-2]右側閉塞性大腸癌に対する術前化学療法に関する多機関後ろ向き観察研究(YCOG2101)

中川 和也1, 小澤 真由美1, 田中 宗伸1, 大矢 浩貴1, 森 康一2, 諏訪 雄亮2, 田 鐘寛3, 諏訪 宏和4, 樅山 将士5, 山岸 茂6, 藤井 義郎7, 遠藤 格1 (1.横浜市立大学消化器腫瘍外科学, 2.横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科, 3.横浜市立みなと赤十字病院外科, 4.横須賀共済病院外科, 5.NTT東日本関東病院外科, 6.藤沢市民病院外科, 7.横浜医療センター外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景】閉塞性大腸癌は予後不良であり,治療成績の改善のために術前化学療法は治療選択の一つと考えられるが,エビデンスは十分ではないのが現状である.
【目的】右側閉塞性大腸癌に対する術前化学療法の成績を後ろ向きに検討する.
 【方法】2012年1月から2017年12月まで横浜臨床腫瘍グループ(Yokohama Clinical Oncology Group;YCOG)参加7施設で,腫瘍局在が盲腸から直腸S状部までのcStageII/III閉塞性大腸癌に対する手術症例202例を後ろ向きに集積した(IRB:B210100048).その内,盲腸から横行結腸中央までの67例を術前化学療法施行群(NAC群)20例と,非施行群(nonNAC群)47例の2群にわけ,治療成績を比較検討した.
 【成績】67例の内訳は男性34例,女性33例で,PS 0/1/2/3はそれぞれ45例/9例/11例/2例であった.NAC群の術前減圧方法は人工肛門造設で,レジメンは全例mFOLFOX6療法がベースで,1例で抗VEGF抗体薬が併用されていた.nonNAC群の最終減圧方法はステントが22例,イレウス管が17例,人工肛門造設が8例であった.年齢や臨床病期の背景因子にNAC群とnonNAC群で差は認めなかった.R0切除率はNAC群95.0%,nonNAC群91.2%と有意差は認めなかった.Clavien-Dindo分類Grade2以上の合併症発生率はNAC群20.0%,nonNAC群25.5%と差は認めなかった.病理組織学的効果判定ではpCRはなかったが,Grade2を5例(25.0%)に認めた.術後補助化学療法施行率はNAC群で75.0%と,nonNAC群の40.4%と比較し,有意に高率であった.3年無再発生存率はNAC群85.0%,nonNAC群67.3%(p=0.08),3年全生存率はNAC群95.0%,nonNAC群72.5%(p=0.06)といずれも有意差は認めなかったが,NAC群で良好な傾向があった.
 【結語】右側閉塞性大腸癌に対する術前化学療法は,長期成績を改善する可能性があり,治療方針のオプションとなりうるかもしれない.