講演情報

[SR7-6]iPadを用いた低位前方切除術後症候群(LARS)患者への支援

榎本 浩也1, 諏訪 勝仁1, 力石 健太郎1, 北川 隆洋1, 牛込 琢郎1, 岡本 友好1, 衛藤 謙2 (1.東京慈恵会医科大学附属第三病院外科, 2.東京慈恵会医科大学外科学講座)
PDFダウンロードPDFダウンロード
(背景)低位前方切除術後症候群(LARS)の症状は日常生活だけでなく心理社会的な側面にも支障をきたす.この排便障害の状況を忙しい外来診療の中で効率的に把握し,治療につなげていくことが肝要である.しかし,LARSの症状は複雑であるために状況把握には時間を要する.
 (目的)LARS患者に対するiPadを用いた排便機能スコアリング評価の有用性と改善点を明らかにする.
 (方法)2019年4月~2024年4月までに直腸前方切除術を受け,LARSと診断された患者を対象とした.診察前に待合室で富士通のHOPE LifeMark-Signを用いてWexner,LARS,FIQL scoreをiPadで入力させ,Wi-Fiで情報を飛ばして電子カルテに反映させる取り組みを2023年8月から開始した.医師は外来診察開始前にiPad調査を行う対象患者を看護師に伝え,iPadは看護師から患者に手渡され,入力後に電子カルテへ反映させる.医師は診察時にサブモニターにその情報を表示しながらさらに問診で掘り下げ,LARSへの治療方針を決定する.この取り組みに対する評価を行うため,患者および看護師に5段階評価のアンケート調査(1~5,5が最高得点)を行った.結果は中央値で示す.
 (結果)55人の患者と7名の看護師からアンケートを回収した.患者へのアンケート調査(年齢中央値70歳)では,良い取り組みである(4),排便状況を自分で把握しやすい(4),自分の排便状況を詳しく伝えられる(4)と良い評価が得られた一方で,全体の29%(16/55),80歳以上に絞ると58%(7/12)が入力の補助が必要であったと回答した.看護師へのアンケート調査では,良い取り組みである(4)と良好な評価である一方,患者への説明が手間(2),文字が小さい(2),80歳以上には入力が困難(2)と回答した.また,入力の手伝いを行った経験のある看護師は7人中6人であった.
 (結語)アンケート調査から,LARS患者に対するiPadを用いた排便機能スコアリング評価の有用性が示されたが,高齢者に対するiPadを用いた調査の困難性や,看護師への負担が明らかになった.