講演情報

[R10-3]術前治療とロボット支援直腸切除術を想定した人工肛門造設

三浦 亮, 奥谷 浩一, 野田 愛, 三代 雅明, 石井 雅之, 市原 もも子, 豊田 真帆, 岡本 行平, 竹政 伊知朗 (札幌医科大学消化器・総合,乳腺・内分泌外科)
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【はじめに】近年,直腸癌に対するロボット支援手術の手術件数は著しい増加傾向にある.また,局所進行直腸癌に対する術前治療が本邦でも標準治療になりつつあるが,閉塞や出血,疼痛を伴う症例に対しては先行した人工肛門造設が必要な場合がある.後にロボット支援での根治手術を行う際には,人工肛門存在下での手術実施を踏まえ,造設時に一定の留意が必要である.今回,当科で施行しているロボット支援直腸切除術を想定した人工肛門造設の工夫と,人工肛門造設下で施行した根治手術の治療成績ついて報告する.
 【手術】当科では根治手術を前提とした人工肛門造設はileostomyとし,腹腔内観察を併施し腹腔鏡下で実施している.基本の造設部位はクリーブランドクリニックの原則に基づき決定するが,後のロボット支援手術のポート配置を意識し,右上腹部での造設を第一選択とする.根治術の際には,ileostomyが近接する場合,右側のポートを少し尾側にする必要があるが,手術操作への影響は経験していない.術後にileostomyは継続して使用可能で,主に後治療が終了した後に閉鎖術を行っている.
 【成績】ileostomy造設を先行して術前治療を行った後,ロボット支援直腸切除術を施行した症例をこれまでに9例経験し,いずれも通常のポート配置で手術を完遂可能であった.直腸切除までのロボットコンソール時間は170分(62-243),出血量は60ml(5-135),術中および術後合併症の発生は無く,術後在院日数は10日(7-15)であった.
 【考察】ロボット支援手術において,ポート配置は操作性,安全性の観点から重要であるため,定型化された配置での手術実施が望ましく,根治手術時に妨げとならない計画的な人工肛門造設を行うことは重要と考える.また,術前治療の重要性は高まりつつあり,閉塞性直腸癌に対し,術前治療・手術・術後治療までを想定したプランを立て治療に臨む必要がある.
 【結語】ileostomy造設状態でのロボット支援直腸切除術は初回手術時からの工夫により安全に施行できており,閉塞性直腸癌に対し,通常の症例と遜色ない治療が可能であった.