講演情報

[VPD4-6]当院における直腸脱に対する経肛門的手術の現状

松村 奈緒美, 佐井 佳世, 米本 昇平, 酒井 悠, 松島 小百合, 鈴木 佳透, 小菅 経子, 紅谷 鮎美, 彦坂 吉興, 河野 洋一, 宋 江楓, 下島 裕寛, 岡本 康介, 國場 幸均, 宮島 伸宜, 黒水 丈次, 松島 誠 (松島病院)
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1989年1月1日から2023年12月31日の35年間に当院で行った直腸脱に関する経肛門的手術は1658件である.ピークは2012年の98件で,同年腹腔鏡下直腸固定術が保険適応に認定されて以来徐々に減少してきたが,現在も経肛門的手術を受ける患者は少なくない.今回2020年以降に当院で直腸脱に対し経肛門的手術を行った症例について検討したので報告する.
 【方法】2020年1月から2023年12月の4年間に当院で経肛門的直腸脱手術を行った69例76件を対象とし,性別,年齢,手術術式と治癒率,排便習慣,直腸脱の脱出腸管長,術前肛門内圧検査について検討を行った.
 【結果】69例中男性4例,女性65例,平均年齢は85.1歳であった.過去に経肛門的直腸脱手術を受けていた症例を12例,直腸固定術が行われた症例を4例,直腸癌術後症例を1例認めた.
治癒を確認できた症例は69例中48例(70.0%),うち5例は再手術または再々手術で治癒した.
術式はDelorme法12件,Gant-三輪法(以下GM法)8件,GM法にThiersch法を加えた手術(以下GMT法)53件,Thiersch法のみ(以下T法)3件の76件であった.
 手術に対する治癒率は63.2%(76件中48件)で,Delorme法が一番高く83.3%(10/12),T法のみ66.7%(2/3),GM法62.5%(5/8),GMT法58.5%(31/53)であった.
 治癒48例(治癒群)と治癒が確認できなかった21例(非治癒群)を比較すると,年齢,性別,排便状態,脱出腸管長は大きな差を認めなかった.肛門内圧検査は静止圧が治癒群20.0mmHgに対し非治癒群16.7mmHg,収縮時圧は治癒群90.0mmHgに対し非治癒群64.4mmHgと非治癒群で低値であった.非治癒群21例のうち5例は他院へ紹介し腹腔鏡下直腸固定術が行われた.
他院にて直腸固定術を行われていたが直腸脱が再発した症例4例および直腸癌術後直腸脱1例は全例治癒した.
 【考察】肛門内圧検査は治癒率と関連する可能性が示唆された.直腸固定術後の再発に対して経肛門的手術は有効性が期待される.治癒率は70%であり経肛門的アプローチによる直腸脱手術に限界はあるが,腹腔鏡手術の適応外の患者や再発例に対する治療法としてあらためて必要性が高まる可能性があると考えられた.