講演情報

[O20-2]中結腸動脈根部切離を伴う腹腔鏡下横行結腸癌手術の工夫

鯉沼 広治, 堀江 久永, 利府 数馬, 東條 峰之, 伊藤 誉, 井上 賢之, 本間 祐子, 味村 俊樹, 北山 丈二, 佐田 尚宏, 山口 博紀 (自治医科大学消化器一般移植外科)
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腹腔鏡下横行結腸癌手術では,腫瘍位置や進行度,技術的困難性から中結腸動脈(MCA)の左/右枝のみ切離する場合も多い.MCAの根部切離が必要な症例は,腫瘍が横行結腸中央付近に位置しMCA領域にリンパ節転移が疑われる場合となる.したがって症例数が比較的少ないにもかかわらず手術難度が高いため,手術の安全性と腫瘍学的な根治性の両立という課題がいまだ存在する.
 【原則手順】
 横行結腸間膜へのアプローチ方法は頭尾側両方向から行っている.理由はGCTへ流入する静脈群を尾側からのみでは判別困難な症例が存在すること,またMCA,MCVの切離を背側に膵臓がないスケルトナイズされた状況で行いたいからである.血管処理は原則として間膜の頭側から副右結腸静脈(ARCV)を確認し切離,それ以外の血管は尾側から切離する.
 【手術手技の実際】
 内側アプローチからSurgical trunkの左側縁を剥離ラインとして中枢方向へ郭清.このラインでも多くの症例でSMAの前面が露出される.回結腸動静脈を切離した後,尾側からGCTの位置のみを確認し一旦頭側へ移る.網嚢を開放,ARCVを切離,膵臓下縁で横行結腸間膜前葉を切離する.再度尾側へ移り,MCA,MCV根部へアプローチ.右側からはSurgical trunk郭清の再開点,左側からはトライツ靭帯切離部位で間膜間隙を作成,両者を結ぶ線で横行結腸間膜処理を行う.このラインでSMAの前面からMCAの根部が露出されるので,左右から挟み撃ちのかたちでMCA,MCVを切離する.横行結腸間膜の前・後葉はそれぞれが腹膜と腹膜下筋膜から構成され,間膜内脂肪もあり思いのほか厚みがあるため,頭尾側の方向転換を何度か繰り返し間膜を薄くしていく.その際横行結腸と小腸には間膜に脂肪境界が認識できるので正しいラインの確認に役立つ.
 【成績】
 MCAの根部切離を行った症例は少数例だが合併症はなく,それを含めた123例では,術中イベントは3例が癒着による開腹移行,1例が間膜出血により臍開腹創から止血,術後合併症(CD分類2以上)は縫合不全1例であった.
 【結論】
 当科におけるMCA根部切離を伴う腹腔鏡下横行結腸癌手術は手順を踏みながら安全に施行されている.