講演情報

[PD6-9]原発性硬化性胆管炎合併潰瘍性大腸炎の臨床的特徴に関する検討

小松 更一1, 品川 貴秀1, 黒川 憲2, 金井 祥子2, 岡田 聡1, 館川 裕一1, 井原 聡三郎2, 阿部 真也1, 永井 雄三1, 松崎 裕幸1, 横山 雄一郎1, 江本 成伸1, 室野 浩司1, 佐々木 和人1, 赤松 延久3, 野澤 宏彰1, 藤城 光弘2, 石原 聡一郎1 (1.東京大学腫瘍外科, 2.東京大学消化器内科, 3.東京大学肝胆膵外科・人工臓器移植外科)
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【緒言】原発性硬化性胆管炎(PSC)を合併した潰瘍性大腸炎(UC)患者では,肝移植やUCに対する手術を要する症例もあり複数の診療科間の協力が必要不可欠である.本邦においてPSC合併UCの臨床的特徴に関する報告は少ない.
 【目的】当院で経験したPSC合併UC患者の臨床的特徴と臨床経過を明らかにする.
 【対象/方法】1988年1月1日から2023年12月31日の期間に当院を受診したPSC合併UC患者75例を対象とし,その臨床的特徴について解析した.UCに対する治療強化は5-ASA製剤の開始/増量,ステロイド全身投与,生物学的製剤,顆粒球除去と定義した.
 【結果】男性が54例(72.0%),PSC先行診断26例(34.6%),UC先行診断19例(25.3%),PSCとUCの同時診断が27例(36.0%)であった.PSC診断時年齢,UC診断時年齢,PSCとUCの診断間隔の中央値(範囲)はそれぞれ30歳(12-66歳),26歳(0-65歳),4.2年(0-34.5年)であった.UCの罹患範囲は全大腸炎型が49例(65.3%)と最も多く,56例(74.7%)で初回治療として5-ASA製剤が開始されていた.UC発症後10年,20年におけるUC関連大腸dysplasia/癌発生率は2.0%,5.2%,UCに対する手術率は8.6%,15.3%であった.肝移植を要した症例は33例(44.0%)で,PSC診断後10年,20年の肝移植率はそれぞれ28.9%,63.3%であった.UC診断後10年,20年でそれぞれ36.7%,45.3%の症例で肝移植前にUC治療強化を要した.肝移植前にUC治療強化が必要であった症例のPSC診断後10年,20年の肝移植率はそれぞれ33.1%,83.1%で,治療強化不要であった症例の肝移植率(30.3%,41.9%)と差はなかった(p=0.59).肝移植後にUC治療強化を要した症例は肝移植後5年,10年でそれぞれ32.4%,39.1%であった.肝移植後にUCに対する手術を要した症例を33例中3例(9.1%)認めた.いずれも肝移植後にUC治療強化を要した症例で,2例はUC関連大腸癌,1例は難治性UCであった.
 【結語】肝移植前のUC治療強化の有無で肝移植率に差はなく,UCに対する適切な治療介入が重要である.また,肝移植後5年でおよそ3割はUCに対する治療強化を必要とする.そのような症例では特にUCANの発生やUC手術の可能性を念頭に,サーベイランス内視鏡を含めた 慎重な経過観察が重要である.