講演情報

[PD6-4]高齢者潰瘍性大腸炎診療における内科と外科の連携

小原 尚, 小金井 一隆, 辰巳 健志, 黒木 博介, 後藤 晃紀, 中尾 詠一, 齋藤 紗由美, 杉田 昭 (横浜市立市民病院炎症性腸疾患科)
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【目的】高齢者潰瘍性大腸炎(UC)手術例においては術後合併症発生率や死亡率が高いため,手術の適応や時期も含めて内科と外科の連携がより重要となる.
【方法】2000年1月から2024年3月までに当科で初回手術を施行したUC症例を対象として下記の検討を行った.
検討①初回手術時年齢別に術後合併症発生率や死亡率を検討して,特に何歳以上のUC症例で注意が必要かについて検討した.
検討②70歳以上で初回手術を施行したUC116例を対象として術後合併症発生や術後在院死亡のリスク因子を検討した.
【結果】
結果①初回手術後の合併症発生率と死亡率は,50-55歳で48%(58/119),0.8%(1/119),55-60歳で48%(51/105),0%(0/105),60-65歳で50%(48/96),0%(0/96),65-70歳で48%(42/87),1%(1/87),70-75歳で60%(28/47),8%(4/47),75-80歳で56%(23/41),5%(2/41),80歳以上で71%(20/28),21%(6/28)であり,70歳以上では術後合併症発生率が約6割以上と高く,術後死亡率が高かった.
結果②UC発症時平均年齢は65.7歳(15.4-88.0),手術時平均年齢は76.7歳(70.1-89.4)で,手術適応は難治41例,重症37例,癌/dysplasia38例で,待機手術が79例,緊急手術が37例であった.術前併存疾患は107例(92.2%)に認めた.初回術式は,大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)42例,大腸全摘・回腸永久人工肛門造設(TPC)36例,結腸亜全摘(STC)32例,その他6例であった.術後合併症は70例(60%)に認め,8例で再手術を要し,在院死12例で死因は肺炎/ARDS11例と肺塞栓1例であった.Clavien-Dindo分類GradeIII以上の合併症の有無で比較すると,術前PSと術前入院日数で統計学的な有意差を認め,術前PSの低下と入院期間が長い症例で術後合併症が多かった.
【結論】高齢者UC外科治療においては術後合併症発率が高く,70歳以上の症例では術後死亡率が高いため注意が必要である.特に術前PS低下と長期入院が術後合併症発生のリスクであった.70歳以上で手術の可能性のあるUC症例では,特に早期から内科外科が連携を密にし,手術の準備をする必要がある.