講演情報
[O5-3]頭側アプローチによるロボット支援下横行結腸癌手術
鶴田 雅士, 石田 隆, 田村 卓也, 竹谷 健, 皆川 卓也, 島田 理子, 平野 佑樹, 大山 隆史, 篠田 昌宏, 板野 理 (国際医療福祉大学医学部消化器外科)
横行結腸癌に対する腹腔鏡手術は,周囲に重要な臓器があり,また血管の破格などもあるために高難度手術として認識され,定型化には至っていない.2022年版の大腸がん治療ガイドラインにおいても,慎重な適応が求められている.当院では以前より,広い視野でまず損傷リスクの高い膵臓を確実に認識することができ,膵下縁を横行結腸間膜起始部として全結腸間膜切除を安全,確実に行うことが可能な頭側アプローチを中結腸動脈及び副中結腸動脈根部リンパ節郭清が必要な結腸癌に対して施行してきた.ロボット支援下手術においても同様の方法を行っており,特に鉗子先端の自由度の高さが本法に適していると考えている.ポート配置は,再建を原則,体腔内吻合を行っているために,最初にまず恥骨上3横指に4cmの横切開による小開腹創をおき,そこに2本ポートを挿入し,1本は助手用鉗子として気腹を開始する.左右対称に下腹部に2本のポートを追加して,残りの1本は病変と体側の季肋下に配している.2番ポートをカメラとして,3番にCurved Scissors Monopolar鉗子もしくはVessel sealerを用いる.手順としては,胃結腸間膜を切離して網嚢を開放後,彎曲部を頭側より授動し,完全に膵臓を露出させる.膵下縁にて前膵筋膜を切離し,Gerota筋膜を同定後,全結腸間膜切離をイメージしながら横行結腸間膜を起始部で切離し,#253リンパ節の郭清を行う.その後,内側もしくは尾側アプローチに変更し授動を追加して腸管を切離吻合する.当院では,結腸癌に対して2022年5月~2024年3月までに,62例のロボット支援化手術を施行したが,そのうち,頭側アプローチは16例に施行した.内訳は,肝彎曲部,横行結腸中央,脾彎曲部がそれぞれ,12,1,3例であり,11例(68.8%)が進行癌であった.手術時間および出血量の中央値はそれぞれ332分,10mlであり,腫瘍の最大径および郭清リンパ節個数の中央値はそれぞれ42mm,24個であった.Grade3以上の術後合併症は認めなかった.術後在院日数(中央値)は6日であった.
当院での安全確実な頭側アプローチによるロボット支援下手術手技を供覧し,その課題や今後の展望について紹介させていただく.
当院での安全確実な頭側アプローチによるロボット支援下手術手技を供覧し,その課題や今後の展望について紹介させていただく.