講演情報

[O3-2]内科治療も行う肛門科診療所におけるクローン病痔瘻の治療戦略

植田 剛, 佐井 壮謙, 中本 貴透, 佐井 聡子 (佐井胃腸科肛門科)
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はじめに:クローン病(CD)肛門病変は高率であるが,CD診療の大半は内科医によってなされているため,その治療は混沌としている.
対象と方法:2024年時点で薬物療法を含め診療しているCD34例中,肛門病変合併25例の治療を検討した.
結果:初診時または経過中に,膿瘍形成を疑うまたは疼痛の強い症例で,肛門精査をかねて仙骨硬膜外麻酔下で診断・処置を施行した.USを用いて膿瘍範囲を同定し,一次口の位置を推定していた.25例中,瘻孔・膿瘍は20例と高率であった.瘻孔・膿瘍以外の5例はcavitating ulcer3例,肛門狭窄1例,浮腫状皮垂1例であり,うち4症例に肛門痛+腸管病変でBio(ADA2,UST2)を導入し改善を得た.膿瘍・瘻孔20例中,根治術を4例に施行,3例は根治術時点でCD診断はなく,lay open2例 coring out1例に施行.2例で難治創となりBio導入で創部治癒した.既診断例はcavitating ulcerからの瘻孔形成でlay openを行い,腸管病変の治療目的に導入したステロイドで腸管,肛門とも寛解した.全例一次口が歯状線か手前で瘻孔本数も1本であった.根治術未施行16例では,膿瘍形成時に開放またはシートン留置を行った.一次口同定症例は一次口にも留置した.シートンにはドレナージ創の早期閉鎖を防止する目的で天然ゴムを頻用し,cuttingすることなく治癒に伴い適宜抜去した.一次口に留置したシートンも同様とした.経過は,3例がドレナージのみで瘻孔形成なし.3例で排膿後の創傷治癒遅延,肛門痛が契機でBio導入し改善を得た(IFX1,ADA2).10例は腸管病変±肛門病変でBio導入し,肛門病変も改善を得た(IFX3,ADA4,UST2,RIS 1).Bio使用中の5例で膿瘍再燃し,再度シートン留置してドレナージ,Bio変更することなく治癒した.
結語:USで膿瘍形態を診断することは十分に可能であり,処置時に行えることからドレナージ不良回避に有用と考えられる.肛門病変合併CDでは,適切なドレナージをまず行い,創部経過でBioを導入する必要性があった.現時点では種々のBio製剤を使用しているが,すべてのBioで改善,治癒していたことを考慮すると,まず十分なるドレナージでの炎症の鎮静化が肝要で,経過でBio導入が妥当と考える.