講演情報
[R14-5]化学療法有害事象発現リスクの予測スコアと高齢症例治療での課題
岩井 拓磨, 山田 岳史, 上原 圭, 進士 誠一, 松田 明久, 横山 康行, 高橋 吾郎, 宮坂 俊光, 金沢 義一, 吉田 寛 (日本医科大学消化器外科)
【背景】社会は未知のスピードで高齢化が進んでおり,本邦はもとよりアジア,欧米含め国際的な課題である.それに伴い症例の高齢化もみられ,75歳以上の大腸癌症例において50%以上がFrailあるいはpre-Frailとも言われる中,高齢だから標準治療の適応が厳しい,では済まされない時代になってきている.高齢でも手術・化学療法をいかに安全に施行できるか,リスクを客観的に評価するかという思考へのシフトが求められる.
癌の薬物療法において副作用管理や支持療法は重要なピースであり,とくに高齢では治療の継続性やQOLに直結する.より個別に最適化された投与量の算出法や有害事象リスク予測は大腸癌治療のアンテッドニーズである.我々は多くの薬物の最大の代謝経路である肝臓がkeyであると考え,今回有害事象と肝容積の関連を検証した.
【方法】緩和的あるいは術後補助として化学療法を導入された大腸癌症例が対象.多発肝転移症例や,治療前から肝機能障害を呈している症例は除外した.治療前のCT画像を用いて3DボリューメトリVINCENTを用いて肝容積を測定しLiver volume/BSA ratio score(LvBR)を算出,有害事象発現との関連を検証した.有害事象は導入早期にCTCAE grade2以上をみとめたものとした.
【結果】119例が抽出された.体表面積と肝volumeの相関係数はR2=0.51であった.早期有害事象をみとめた56例のBLvRはmedian 0.72,有害事象なし63例ではmedian 0.87と有意差を認めた(P=0.001).LvBRによる有害事象発現予測のROC曲線ではAUC=0.77:95%CI=0.68-0.86であった.
【考察】LvBRは有害事象発現リスクに有用である.しかしながら高齢では疾患治療ができたとしても著明な自立度の低下を残すリスクも高く,意思決定には,治療の包括的なイメージを想起できる説明の工夫や,リスクの客観的な評価をしたうえで,患者の人生観・希望等をふまえた相互的な話し合いを持つnarrative medicineがより重要となる.また,積極的治療と緩和ケアのバランスも難しく,end of life careに対する文化的な考えも社会として再考していかなければならない課題である.
癌の薬物療法において副作用管理や支持療法は重要なピースであり,とくに高齢では治療の継続性やQOLに直結する.より個別に最適化された投与量の算出法や有害事象リスク予測は大腸癌治療のアンテッドニーズである.我々は多くの薬物の最大の代謝経路である肝臓がkeyであると考え,今回有害事象と肝容積の関連を検証した.
【方法】緩和的あるいは術後補助として化学療法を導入された大腸癌症例が対象.多発肝転移症例や,治療前から肝機能障害を呈している症例は除外した.治療前のCT画像を用いて3DボリューメトリVINCENTを用いて肝容積を測定しLiver volume/BSA ratio score(LvBR)を算出,有害事象発現との関連を検証した.有害事象は導入早期にCTCAE grade2以上をみとめたものとした.
【結果】119例が抽出された.体表面積と肝volumeの相関係数はR2=0.51であった.早期有害事象をみとめた56例のBLvRはmedian 0.72,有害事象なし63例ではmedian 0.87と有意差を認めた(P=0.001).LvBRによる有害事象発現予測のROC曲線ではAUC=0.77:95%CI=0.68-0.86であった.
【考察】LvBRは有害事象発現リスクに有用である.しかしながら高齢では疾患治療ができたとしても著明な自立度の低下を残すリスクも高く,意思決定には,治療の包括的なイメージを想起できる説明の工夫や,リスクの客観的な評価をしたうえで,患者の人生観・希望等をふまえた相互的な話し合いを持つnarrative medicineがより重要となる.また,積極的治療と緩和ケアのバランスも難しく,end of life careに対する文化的な考えも社会として再考していかなければならない課題である.