講演情報

[R6-4]クローン病関連消化管癌合併例の臨床像の変化と課題

小金井 一隆, 辰巳 健志, 黒木 博介, 後藤 晃紀, 小原 尚, 中尾 詠一, 齋藤 紗由美, 杉田 昭 (横浜市立市民病院炎症性腸疾患科)
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クローン病(CD)に合併する炎症性発癌の診断と治療は診療上大きな課題である.【目的】クローン病関連消化管癌合併例の臨床経過からその予後改善への対策を明らかにする.【対象】CD炎症性発癌を合併した自験83例(男60,女23)を対象とした.【方法】背景,臨床経過,予後の経時的推移を2016年以前診断例(前期群)と2017年以降診断例(後期群)に分けて比較検討した.【結果】全例のCD発症年齢は平均26歳(13~54歳)で,癌占拠部位は直腸肛門管が57例(67%)であった.前期群は40例,後期群は43例で,それぞれ,男女比は28:12と32:11で差はなく,病型別の例数は小腸型,小腸大腸型,大腸型が2,33,6と0,29,14であった.CD発症年齢は25.6歳と25.9歳で差がなく,癌診断時年齢は45歳と52歳,CD発症から癌診断まで22年と25年とそれぞれ有意差を認めた(P<0.05).直腸肛門管癌は83%(33例)と56%(24例)で,後期で結腸小腸や瘻管内など他部位の癌症例が有意に増加した.癌の診断が手術前であった症例は62.5%(25例)と65%(28例)と差がなかったものの,早期癌の症例は7.5%(3例)と30.2%(13例)と後期群で有意に増加した.Stageが0,1であった症例は12.5%(5例)から41.8%(18例)に有意に増加し,直腸肛門管癌のみでは15.2%から50%に増加した.Stage 0,1の23例の診断契機は術前内視鏡検査が15例,既往手術時の肛門部生検が3例,MRI検査が1例,術中,術後病理組織検査が4例であった.癌の遺残がないR0手術例は42.5%(17例)と58.1%(25例)と増加したものの有意差がなく,遠隔転移や腹膜播種などで切除術ができなかった症例は10%(4例)から18.6%(8例)に増加し,累積5年生存率は47.5%と54.3%で有意差はなかった.【結語】クローン病関連消化管癌は直腸肛門管に最も多いものの,それ以外の部位の症例が増加していた.近年も,進行癌が多く,R0手術例が少なく,明らかな予後改善は認めなかった.一方,早期癌やstage 0,1の症例は増加しつつあり,内視鏡検査時や腸管手術時の生検採取が発見契機となっていた.クローン病関連消化管癌の予後改善には早期診断例を増加させるため積極的な検査の施行が重要と考えられた.