講演情報

[PD3-5]腹腔鏡下結腸癌手術における体腔内吻合~術後合併症と予後に関する検討~

野口 竜剛, 山口 智弘, 坂本 貴志, 松井 信平, 向井 俊貴, 秋吉 高志, 福長 洋介 (がん研究会有明病院大腸外科)
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【目的】近年,鏡視下手術後の体腔内吻合(IA)が注目されているが,体腔外吻合(EA)と比較した有用性に関して,質の高いエビデンスがある訳ではない.そこで,当院のIAの適応,感染・播種再発防止の工夫を提示し,IAとEAの短期・中期成績を明らかにすることを目的とした.
【対象と方法】2019年1月~2021年7月の期間において,右側結腸癌に対して施行した腹腔鏡下手術のうち,虫垂癌・ステージIV・重複癌・フォロー期間が1年未満の症例を除いた287例を後方視的に検討した.下剤を十分にかけられない症例,便が貯留している症例はIAの適応外とした.
【結果】男性/女性=115例/172例,年齢中央値 69歳(27-93歳),IA群/EA群=62例/225例であった.年齢,性別,BMI,ASA,cStage(cStage I/II/III:IA群 23/16/23例 vs. EA群 95/67/63例,P=0.383),術式(回盲部切除/結腸右半切除/結腸部分切除(横行結腸):IA群 15/40/6例vs. EA群 85/118/22例,P=0.069)において両群間で有意差を認めなかった.手術時間はIA群で有意に長かったが(235分 vs. 202分,P<0.0001),出血量に有意差を認めず(10ml vs. 10ml,P=0.224),初回排便までの期間はIA群で有意に短かった(2日 vs. 3日,P<0.0001).Clavien-Dindo分類Grade III以上の術後合併症は有意差を認めなかった(3.2% vs. 5.8%,P=0.537).IA群においてGrade II以上の腹腔内膿瘍は認めなかった.3年無再発生存率は有意差を認めなかった(IA群 vs. EA群,96.8% vs. 91.8%,P=0.197)(観察期間中央値3年8か月).IA群の再発は肝転移1例,腹膜播種1例(T,pT4aN2b,BRAF MT,術後7か月に指摘)であった.EA群の再発は肝転移4例,肺転移12例,腹膜播種を5例に認めた.
【結語】IAの適応を厳格にし,便汁漏出に対する対策を行った結果,IA群はEA群と比較して腹腔内膿瘍を含む術後合併症に差を認めず,初回排便までの期間が短かった.予後に関しては症例が少ないため,今後の検討が必要である.