講演情報

[R5-3]直腸癌術後の縫合不全とサルコペニアとの関連(propensity score-matched analysis)

阿部 真也, 野澤 宏彰, 佐々木 和人, 室野 浩司, 江本 成伸, 金子 健介, 横山 雄一郎, 松崎 裕幸, 永井 雄三, 品川 貴秀, 館川 裕一, 岡田 聡, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
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【背景】大腸癌においてサルコペニアは術後短期・長期成績の不良因子として報告されている.しかし,直腸癌に限った報告は少なく,サルコペニアと直腸癌術後短期成績との関連は明らかでない.
 【目的】サルコペニアと直腸癌術後短期成績との関連を明らかにする.
 【方法】2003年から2021年に当科にて根治術を施行した直腸癌のうち,炎症性腸疾患関連癌を除く787例を対象とした.術前CT画像を用いて第3腰椎レベルの腸腰筋面積を測定し,身長で補正したPsoas muscle mass index(PMI)を算出した.サルコペニアは,日本肝臓学会が提唱するPMIカットオフ値(男性で6.36 cm2/m2,女性で3.92 cm2/m2)を使用して定義した.背景因子をマッチングして,術後成績を比較検討した.
 【結果】サルコペニア群/非サルコペニア群の背景はマッチング前(350/437例)において年齢,性別,BMI,ASA-PS score,開腹手術率,術式,TNM Stageに差を認めた.マッチング後(266/266例)は,術式はLAR 188/190,APR 41/42,ISR 33/31,ハルトマン手術4/3例となり,BMI中央値21.2/23.5kg/m2(p<0.01)以外の背景因子に差を認めなかった.サルコペニア群は全合併症率が高く(33/25%,p<0.05),縫合不全は有意に多かった(1.9/0%,p<0.01).全症例における多変量解析でも,サルコペニアは独立した術後合併症の危険因子だった.
 【結語】サルコペニアを有する直腸癌患者では術後合併症が多く,縫合不全との関連が示唆された.