講演情報

[PD8-9]M1cステージ別の腹膜播種巣切除の治療効果の検討

岩佐 陽介1, 小山 文一1,2, 久下 博之1, 高木 忠隆1, 藤本 浩輔1, 田村 昂1, 江尻 剛気1, 吉川 千尋1, 庄 雅之1 (1.奈良県立医科大学消化器・総合外科, 2.奈良県立医科大学附属病院中央内視鏡部)
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【はじめに】腹膜転移を有する大腸癌は予後不良である.当科ではCurB手術が予後改善に寄与すると考え,可能な症例に対し播種巣全切除と他の遠隔転移巣切除を積極的に施行してきたが,腹膜転移巣の切除意義については定まっていない.今回,当科の同時性腹膜転移を有する大腸癌の治療成績をStage別に解析し,腹膜播種巣の切除意義を検討した.【対象】2007年から2022年までに術中に同時性腹膜転移と診断し,原発巣切除を施行した53例をsStageM1c1 25例とM1c2 28例の2群に分けて検討した.【結果】M1c1群とM1c2群のそれぞれの年齢は67(24~89)/68.5(40~85)歳,男:女が10:15/16:12例,BMIは21.9(18.0~33.7)/22.4(40~85),原発部位は右側:左側が13:12/17:11例であった.P1:P2:P3が8:11:6/7:6:15例,M1c2群において,転移臓器数は2臓器/3臓器以上が20/8例,播種巣の肉眼的全切除を14(56.0%)/8(28.6%)例に,異時性を含めCurB手術を14(56.0%)/2(7.1%)例に施行した.術後病理組織ではpor/mucを4/5例に認めた.術後の化学療法導入は20(80.0%)/23(82.1%)例に行った.初診時から1年/2年生存率がそれぞれ80.0%/52.0%と57.1%/35.7%であった.M1c1群における全生存率に関する単変量解析では播種巣切除非施行(P=0.005),低分化型(P=0.005),術後化学療法非施行(P=0.011),が予後不良因子として抽出され,多変量解析においてもこれらは独立した予後不良因子として抽出された.また播種巣切除例の播種再発は10例(71.4%)であり,播種再発までの期間の中央値は17.9ヶ月であった.また,播種巣切除例と非切除例に関する背景因子の比較では,切除例は全例P1,P2症例であった(P<0.001).次にM1c1群に対して全生存率に関する単変量解析では術後化学療法非施行とCurCが予後不良因子として抽出されたが,多変量解析では術後化学療法非施行のみが独立した予後不良因子として抽出された.また,両群において,播種グレードは予後因子とはならなかった.【結語】腹膜播種症例に対して,術前に遠隔転移を認めない症例においては播種巣全切除を行うことで予後延長が期待できるが,播種再発率は高率であり,術後の化学療法が重要と考える.