講演情報
[O10-3]当科におけるTNT療法の治療成績
中西 正芳, 岡島 航 (松下記念病院)
はじめに
進行下部直腸癌に対して治療成績向上のため,近年では化学療法,放射線療法,手術療法を組み合わせたTNT(total neoadjuvant therapy)が有用であるとする報告がある.当院でも2021年からTNTを開始したため,その治療成績について報告する.
対象
1)Rbを主座とする下部進行直腸癌
2)臨床診断でT4bもしくはN2以上
方法
1)Long course CRT(TS-1経口投与,放射線照射 1.8GyX25fr)
2)Consolidation chemotherapyとしてXELOX療法4コース
3)手術
4)リンパ節転移陽性例ではXELOX療法4コース
結果
5例に治療を行い,全例で術前治療は完遂可能であった.臨床的奏功度はcCR:cPR:cSD:cPD 0:1:4:0,施行された手術は超低位前方切除術3例,腹会陰式直腸切断術1例,骨盤内臓全摘術1例であった.術後の合併症は創感染2例を認めるのみであり,術後の在院期間中央値は13日であった.肛門を温存した3例のうちで早期に肺転移再発を来した1例を除く2例で人工肛門を閉鎖可能であった.病理検査ではgrade 3:0例,grade 2:2例,grade 1b:2例,grade 1a:1例という結果であり,pCR症例はなかった.
術後の観察期間中央値は562日であるが,全例生存中であり,5例中3例で遠隔転移再発(肝転移1例,肺転移2例,局所再発1例)を認め,うち肝転移を認めた1例に対して切除術を行った.
考察
高度進行下部直腸癌に対するTNT療法は安全に実施可能であった.しかしながら手術がやや困難になること,遠隔転移を制御するのは困難であることが課題である.治療法もlong course CRTかshort course CRTか,consolidation chemotherapyかinduction chemotherapyか,適応をどうするかなど解決すべき課題は多く,今後の臨床試験の結果報告が待たれる.
進行下部直腸癌に対して治療成績向上のため,近年では化学療法,放射線療法,手術療法を組み合わせたTNT(total neoadjuvant therapy)が有用であるとする報告がある.当院でも2021年からTNTを開始したため,その治療成績について報告する.
対象
1)Rbを主座とする下部進行直腸癌
2)臨床診断でT4bもしくはN2以上
方法
1)Long course CRT(TS-1経口投与,放射線照射 1.8GyX25fr)
2)Consolidation chemotherapyとしてXELOX療法4コース
3)手術
4)リンパ節転移陽性例ではXELOX療法4コース
結果
5例に治療を行い,全例で術前治療は完遂可能であった.臨床的奏功度はcCR:cPR:cSD:cPD 0:1:4:0,施行された手術は超低位前方切除術3例,腹会陰式直腸切断術1例,骨盤内臓全摘術1例であった.術後の合併症は創感染2例を認めるのみであり,術後の在院期間中央値は13日であった.肛門を温存した3例のうちで早期に肺転移再発を来した1例を除く2例で人工肛門を閉鎖可能であった.病理検査ではgrade 3:0例,grade 2:2例,grade 1b:2例,grade 1a:1例という結果であり,pCR症例はなかった.
術後の観察期間中央値は562日であるが,全例生存中であり,5例中3例で遠隔転移再発(肝転移1例,肺転移2例,局所再発1例)を認め,うち肝転移を認めた1例に対して切除術を行った.
考察
高度進行下部直腸癌に対するTNT療法は安全に実施可能であった.しかしながら手術がやや困難になること,遠隔転移を制御するのは困難であることが課題である.治療法もlong course CRTかshort course CRTか,consolidation chemotherapyかinduction chemotherapyか,適応をどうするかなど解決すべき課題は多く,今後の臨床試験の結果報告が待たれる.