講演情報
[P10-1-6]当院における痔核手術の術後出血により判明したXIII因子欠乏症の検討
渡辺 伸和1, 早川 一博2 (1.青森厚生病院外科, 2.早川内科肛門科)
【はじめに】当院は痔核に対して主に結紮手術を施行し,ALTAも併用する有床診療所である.今回,痔核手術後に出血を起こした症例のなかに第XIII因子欠乏症の症例が複数存在することを確認したので報告する.【対象】2010年1月から2023年12月までの14年間に腰椎麻酔下に施行した痔核手術は2472例だった.術後出血を25例(1.0%,直近5年間では術後出血は0.72%)で認めた.そのうち,第XIII因子を調べた症例は14例であり,第XIII因子欠乏症を診断された症例は5例だった.これらの5症例について,臨床学的な特徴を検討した.【結果】男女比は男性3例,女性2例.平均年齢は39歳(17歳から50歳).過去に出血傾向や凝固異常を指摘された症例は無かった.APTTの延長を認めた症例は1例,PT時間の延長を認めた症例はいなかった.平均の術後出血時期は術後17.5日(術後11日から31日)で,全例で再入院のうえ止血術を行った.また,そのうち2例は複数回の止血手術を要した.5例中4例に第XIII因子の補充が行われ,補充後の出血を認めなかった.人数が少ないので統計処理は行っていないが,第XIII因子欠乏症群(5症例)と第XIII因子正常値群(9症例)では,年齢,出血時期に大きな変わりは無かった.【考察】第XIII因子欠乏症は凝固反応の最終段階でフィブリン同士を架橋結合させ機械的な抵抗性をもたらす.第XIII因子が欠乏すると組織の修復が進む前に血栓が溶解されるためいったん止血した半日以降に同部位から出血を来す.また,血小板減少やPTやAPTTの延長を認めずに重篤な出血傾向を呈する症例の報告例や,痔核手術や出産を契機に診断される症例も散見され,注目されている.当院でも術後の直後の出血よりも,退院後に生じた術後出血から第XIII因子欠乏症を疑い,診断に至った.今回,XIII因子欠乏症について文献的考察を加えて報告する.