講演情報

[VPD2-5]ストーマ関連合併症ゼロを目指したストーマ造設手技の工夫と治療成績

武田 泰裕, 後藤 圭佑, 岡本 敦子, 小山 能徹, 阿部 正, 中野 貴文, 大熊 誠尚, 小菅 誠, 衛藤 謙 (東京慈恵会医科大学消化管外科)
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【背景】
管理困難なストーマは患者のQOLを著しく低下させることを念頭にストーマを造設することが重要である.ストーマ造設後の晩期合併症の中で最も頻度が高いとされている傍ストーマヘルニアは,ストーマ造設経路が原因の一つとされている.
【方法】
2008年1月から2022年12月に当院で直腸癌または肛門管癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行した患者78例を対象に,腹腔内経路群(Intraperitoneal群:I群)と腹膜外経路群(Extraperitoneal群:E群)とし,傍ストーマヘルニアの発生に関して患者因子と手術関連因子の面から後方視的に検討した.
【結果】
全体の年齢中央値は66歳で男性が55例(70.5%)を占め,9例(11.5%)に傍ストーマヘルニアを認めた.I群(30例):E群(48例)でアプローチ法(鏡視下/開腹;I群:16/14,E群:42/6,P=0.001)に差を認めたが,年齢(I群:65.0±8.4歳,E群:65.7±13.2歳,P=0.271),BMI(I群:23.0±6.0 kg/m2,E群:22.0±3.5 kg/m2,P=0.670),術前ASA score(1/2/3;I群:9/17/4,E群:13/29/6,P=0.947)および病期別割合(Stage I-II/III-IV;I群:15/15,E群:23/2,P=1.000)などその他の患者因子に差はなく,E群で手術時間が長い(P=0.027)が出血量および在院日数などの手術関連因子は両群間に有意な差を認めなかった.I群の7例(23.3%),E群の2例(4.2%)に傍ストーマヘルニアを認めた.傍ストーマヘルニアの発生危険因子の単変量解析では腹膜外経路の有無(p=0.001)およびBMI(≧22 kg/m2)(p<0.001)に有意差を認めた.多変量解析でも腹膜外経路の有無(p=0.013)およびBMI(≧22 kg/m2)(p=0.0027)が独立危険因子であった.
【結語】
腹膜外経路による永久人工肛門造設術は傍ストーマヘルニアの予防に有用であることが示唆された.当施設ではストーマ関連合併症をなくすために,様々な工夫を行っている.鏡視下での腹膜外経路によるストーマ造設手技および腹壁瘢痕ヘルニアリスク軽減を視野にいれたポート配置や検体摘出創の工夫などについても供覧する.