講演情報

[R12-2]局所進行直腸癌に対する術前治療の効果と予後に関する検討

皆川 結明, 芥田 壮平, 大和 美寿々, 中西 彬人, 藤井 能嗣, 岡崎 直人, 石山 泰寛, 石井 利昌, 平沼 知加志, 平能 康充 (埼玉医科大学国際医療センター)
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背景:近年,局所進行直腸癌に対する術前治療が普及している.放射線化学療法をはじめとする術前治療は局所再発率を下げるが,生存期間の延長には寄与しないことが知られている.今回,術前治療によりdown stagingを得ることが予後に与える影響について検討を行った.
 対象と方法:2008年から2020年までに当院で術前治療を経て根治切除を施行した局所進行直腸癌94例を対象とした.術前治療によりdown stagingした36例とnon-down staging群の58例の2群にわけ,臨床的特徴および長期成績について後方視的に検討した.
 結果:患者背景は,性別,年齢中央値,BMI,ASA3以上について両群で有意差を認めなかった.
 術前治療の内訳は放射線単独が7例,放射線化学療法が83例,化学療法単独が4例であった.腫瘍学的背景については,術前病期診断で有意差を認めず,術後病期診断はdown staging群でStage0が25例(69.4%)と有意に多かった(p<0.05).手術成績は術式,手術時間,出血量,術後在院日数,採取したリンパ節個数に有意差を認めなかった.
 また,病理組織学的には断端陽性とリンパ管侵襲の割合については両群で有意差を認めなかったが,non-down staging群で脈管侵襲は31例(53.4%)が陽性であり,他臓器浸潤を9例(15.5%)に認め,いずれも有意に多かった(p<0.05).
 長期成績は5年生存率がdown staging群でnon-down staging群よりも有意に良好であり(OS 100% vs 82.7%,観察期間中央値1458日,p=0.02),再発はnon-down staging群で16例(27.6%)に有意に多かった(p<0.05).
 結語:局所進行直腸癌に対する術前治療によりdown stagingを得ることが,長期予後の延長に寄与する可能性があることが示唆された.