講演情報

[P4-2-5]大腸癌手術症例におけるHALP scoreの予後予測因子としての有用性

大徳 暢哉, 下川 琢也, 山尾 宣暢, 藏元 一崇 (都城医療センター外科)
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【背景】大腸癌術前における血液生化学的所見を組み合わせた栄養評価が,術後の経過に影響を及ぼすことが多く報告されている.近年,さまざまな癌腫においてHALP(Hemoglobin, Albumin, Lymphocyte, and Platelet)scoreが予後予測因子となることが知られているが,大腸癌との関連を示す報告は少ない.今回われわれは,HALP scoreの大腸癌における予後予測因子としての有用性を検討した.
【対象・方法】2016年から2023年に原発巣切除を施行した大腸癌336例を対象とした.HALP scoreは術前のヘモグロビン値(g/dL)×血清アルブミン値(g/dL)×リンパ球数(×102/μL)/血小板数(×103/μL)から算出し,全生存期間からROC曲線によるcut-off値を用いてLow群,High群に分類した.HALP scoreと臨床病理学的因子,術後短期・長期成績について検討した.長期予後についてPNI(Prognostic Nutritional Index),GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index),mGPS(modified Glasgow Prognostic Score),CONUT(Controlling Nutritional Status)といった他の栄養評価を含めて解析した.
【結果】年齢中央値73歳(27-96歳),男性:女性=198例:138例,原発部位は結腸:直腸=218例:110例,臨床病期はI:II:III:IV=69例:134例:87例:32例であった.5年全生存期間(OS)はHigh群 vs Low群=78.1% vs 49.7%とLow群で有意に短かった(p<0.001).臨床病理学的因子の中から,OSを予測する最良の組み合わせをCox比例ハザードモデルを用いて算出すると,ASA-PS≧3,CA19-9≧37 U/mL,リンパ節転移陽性が検出された.これらの因子をbase modelとして,OSに対するconcordance index(c-index)を算出すると0.730であった.Base modelに他の栄養指標を各々加え,OSに対するc-indexを算出すると,それぞれHALP score 0.765,PNI 0.764,GNRI 0.764,mGPS 0.758,CONUT 0.761でありHALP scoreは最もc-indexを改善した.Base modelとOSに関する因子でそれぞれ多変量解析を行うと,HALP scoreは独立した予後予測因子であった(Low群 vs High群,HR=2.859,95%CI=1.501-5.444,p=0.001).
【結語】HALP scoreは大腸癌手術症例における予後予測因子として有用である.