講演情報

[P15-1-8]電解質喪失症候群を呈した巨大直腸絨毛腫瘍に対しロボット支援手術を施行した1例

水越 幸輔1, 尾嶋 英紀2, 前村 果穂1, 服部 小百合1, 杉澤 文1, 髙橋 直樹1, 肥満 智紀1, 小西 尚巳1, 鈴木 秀郎1, 町支 秀樹1 (1.桑名市総合医療センター外科, 2.三重県立総合医療センター消化器・一般外科)
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【緒言】直腸絨毛腫瘍は時に巨大化し,多量の粘液分泌により高度な電解質異常をきたすことがある.今回,電解質喪失症候群を呈した巨大な直腸絨毛腫瘍に対しロボット支援腹腔鏡下腹会陰直腸切断術を施行した1例を経験したので報告する.
 【症例】68歳,男性.既往は特記なし.入院2ヵ月前からの下痢,1週間前からの倦怠感,立ち眩みを主訴に近医を受診し,腎前性腎不全および電解質異常を指摘され,精査加療目的に緊急入院となった.原因精査のCT検査で骨盤内を占める直腸腫瘤を認め,大腸内視鏡で直腸RS~歯状線に至る巨大な絨毛腫瘍と多量の粘液分泌を認めた.肉眼的に明らかな癌所見は認めなかったが,組織生検はGroup 4であった.また,骨盤MRIで腫瘍全体に異常信号を呈し,癌合併の可能性が示唆された.そのため術式は直腸肛門管の早期癌に準じ,腹会陰式直腸切断術の方針とし,アプローチ法はロボット支援手術を選択した.拡張した直腸が骨盤内を大きく占拠していたが視野は良好であり,前立腺下縁付近まで腹腔内から授動した後,会陰操作を追加し摘出した.郭清は中枢側D3,側方郭清なしとした.術後経過は良好であり,術後14日目に退院となった.
 【病理組織診断】長径19cmの巨大腫瘍で,肛門縁までの距離は1cmであった.組織型はTubulovillous adenomaであり,計12箇所で評価したが癌の合併は認めなかった.
 【考察】電解質症候群を呈した絨毛腫瘍は稀な疾患であり,10cm以上の巨大症例に多いとされる.また,癌の合併頻度が高いものの深達度は浅い症例が多いとされ,近年ではESDの報告例も散見される,一方で進行癌や粘液漏出によるimplantationの報告例もあり,術式は慎重に選択する必要がある.自験例では広範囲に癌を合併している可能性があり,腫瘍径や肛門縁までの距離,術後のQOL等を考慮し,確実に根治切除可能な直腸切断術を選択した.また,骨盤内を占める腫瘍のボリュームが問題となるが,腫瘍自体が柔らかいこともあり,ロボット支援手術の特徴ともいえる狭い空間での術野展開能力を生かし,良好な視野で手術を行うことが可能であった.巨大な絨毛腫瘍に対してもロボット支援手術は有用なアプローチ法と考えられた.