講演情報

[SR2-3]腹腔鏡/ロボット支援下結腸癌切除術における体腔内吻合の治療成績から見えてきたメリットのある症例の選別

平木 将之, 柳澤 公紀, 在田 麻美, 畑 泰司, 村田 幸平 (関西労災病院消化器外科)
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【はじめに】
 結腸癌手術における体腔内吻合は疼痛軽減や腸蠕動の早期回復などのメリットが期待され,結腸癌に対するロボット手術の適応拡大以降急速に広がっているが,適応症例に関するエビデンスは不十分である.当院では2021年に導入して以来120例施行しており,体外吻合との比較により最もメリットのある症例の抽出を行う.
 【対象と目的】
Overlap法を第一選択とし,腸管の方向に応じてデルタ変法やFEEAを行う.腸切離前にICGによる血流評価を行い,股部の補強も行う.腸管開放時間を最小限にするため共通孔閉鎖はステイプラーを用いる.
 2022年5月~2024年3月に腹腔鏡/ロボット支援結腸癌手術(S除く)を行った連続する175例を対象に体腔内吻合(ICA)群101例と体外吻合(ECA)群74例で短期成績を後方視的に比較した.値は中央値.
 【結果】
 ICAとECA群間で,性別,BMI(22 vs 22,p=0.87),局在,腹部手術歴(36% vs 35%,p=0.87)の背景は同等であるも,年齢はICA群で低かった(73 vs 78years,p=0.01).アプローチはICA群Robot/Lap=37/64,ECA群0/74,術式はICA群ICR/RHC/eRHC/T/LHC=35/25/12/12/17,ECA群41/16/6/2/9(p=0.1),吻合はICA群Delta/Overlap/FEEA=10/84/7,ECA群全例FEEAであった.ICA群は,創部長が短く(30 vs 38mm,p=0.002),出血が少ないが(9 vs 14mL,p<0.001),手術時間は延長した(277 vs 247mins,p<0.001).頓用鎮痛剤数は少なく(0 vs 1,p=0.003),術後VASは低く(p=0.001,twoway-ANOVA),食事開始は早く(2 vs 3days,p=0.03),在院日数は短かった(7 vs 9days,p<0.0001).CDgrade2以上の合併症は,イレウス(1.9% vs 2.7%,p=1.0),SSI(1.0% vs 1.4%,p=1.0)で同等であった.
全例ではICAで手術時間の延長を認めたが,腹部手術歴62例内(ICA36例/ECA26例=275/240mins,p=0.6),または拡大RHC18例内(ICA12例/ECA6例=357/354mins,p=0.6)での検討では同等であった.
 【結語】
 当院の結腸癌切除術における体腔内吻合は,既知報告の通り低侵襲性と整容性のメリットを認めた.新規手技導入の影響で手術時間の延長を認めたが,腹部手術歴や拡大RHCの症例に限れば手術時間短縮に寄与していた.ロボット手術の拡大と手技の向上に伴う手術時間の短縮が望まれる.