講演情報
[PD5-5]長期予後からみたESD後大腸T1癌における最低分化度評価の有用性
濵田 拓郎1, 山下 賢1, 才野 正新1, 森元 晋1, 西村 朋之1, 田丸 弓弦2, 桑井 寿雄3, 永田 信二4, 岡 志郎1 (1.広島大学病院消化器内科, 2.独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター, 3.広島大学病院消化器内視鏡医学講座, 4.広島市立北部医療センター安佐市民病院消化器内科)
【背景と目的】大腸T1癌の病理組織所見において主組織型を優勢像と最低分化度のどちらで評価するかは,本邦と海外のガイドラインで異なっている.今回,主組織型の病理学的判定方法に着目して,大腸T1癌の長期予後について多施設で検討した.
【方法】2008年1月から2016年8月に広島大学病院と関連2施設でESDを施行した大腸T1癌278症例のうち,大腸癌治療ガイドライン2022年版記載の内視鏡切除後T1癌における病理学的リンパ節転移危険因子を1つ以上持ち,かつ5年以上経過を追えた187症例(平均観察期間76ヶ月)を対象とした.ESD後に経過観察した58症例(ESD群)と,ESD後追加外科切除を行った129症例(SR群)の2群に分類し,以下について検討した.(検討1)臨床病理学的特徴(年齢,性別,局在,腫瘍径,SM浸潤距離,優勢像,最低分化度,静脈侵襲陽性,リンパ管侵襲陽性,簇出の程度)と治療成績(一括切除率,偶発症),予後(再発,5年全生存率;5-OS,5年無再発生存率;5-DFS,5年疾患特異的生存率;5-DSS)を2群間で比較検討した.(検討2)SM浸潤距離のみがリスク因子である群をlow risk群(L群),それ以外をhigh risk群(H群)と定義し,治療法別(ESD群,SR群)にL群とH群間の長期予後を比較検討した.
【結果】(検討1)ESD群がSR群と比較して平均年齢が有意に高かった(72.7歳vs. 67.5歳).偶発症はESD群5例(後出血2例,穿孔3例,SR群7例(後出血4例,穿孔3例)に認めた.SR群はESD群と比較して最低分化度を含む割合(63.6% vs. 45.6%),静脈侵襲陽性の割合(38.0% vs. 22.3%)が有意に高かった.再発はESD群5例(肝臓4例,局所3例,リンパ節2例,肺1例),SR群8例(リンパ節6例,局所4例,肺2例,肝臓1例)に認めた(重複あり).原癌死はESD群2例,SR群2例に認めた.5-OS,DFS,DSSは両群間で有意差を認めなかった.(検討2)主組織型を優勢像として評価した場合,治療法別ではL群とH群間の長期予後に有意差を認めなかった.主組織型を最低分化度として評価した場合には,ESD群においてL群はH群と比較して5-DFSが高い傾向であった(100% vs 85.7%).
【結語】主組織型を最低分化度で評価することにより,大腸T1癌ESD後の再発リスクを層別化できる可能性があると考えられた.
【方法】2008年1月から2016年8月に広島大学病院と関連2施設でESDを施行した大腸T1癌278症例のうち,大腸癌治療ガイドライン2022年版記載の内視鏡切除後T1癌における病理学的リンパ節転移危険因子を1つ以上持ち,かつ5年以上経過を追えた187症例(平均観察期間76ヶ月)を対象とした.ESD後に経過観察した58症例(ESD群)と,ESD後追加外科切除を行った129症例(SR群)の2群に分類し,以下について検討した.(検討1)臨床病理学的特徴(年齢,性別,局在,腫瘍径,SM浸潤距離,優勢像,最低分化度,静脈侵襲陽性,リンパ管侵襲陽性,簇出の程度)と治療成績(一括切除率,偶発症),予後(再発,5年全生存率;5-OS,5年無再発生存率;5-DFS,5年疾患特異的生存率;5-DSS)を2群間で比較検討した.(検討2)SM浸潤距離のみがリスク因子である群をlow risk群(L群),それ以外をhigh risk群(H群)と定義し,治療法別(ESD群,SR群)にL群とH群間の長期予後を比較検討した.
【結果】(検討1)ESD群がSR群と比較して平均年齢が有意に高かった(72.7歳vs. 67.5歳).偶発症はESD群5例(後出血2例,穿孔3例,SR群7例(後出血4例,穿孔3例)に認めた.SR群はESD群と比較して最低分化度を含む割合(63.6% vs. 45.6%),静脈侵襲陽性の割合(38.0% vs. 22.3%)が有意に高かった.再発はESD群5例(肝臓4例,局所3例,リンパ節2例,肺1例),SR群8例(リンパ節6例,局所4例,肺2例,肝臓1例)に認めた(重複あり).原癌死はESD群2例,SR群2例に認めた.5-OS,DFS,DSSは両群間で有意差を認めなかった.(検討2)主組織型を優勢像として評価した場合,治療法別ではL群とH群間の長期予後に有意差を認めなかった.主組織型を最低分化度として評価した場合には,ESD群においてL群はH群と比較して5-DFSが高い傾向であった(100% vs 85.7%).
【結語】主組織型を最低分化度で評価することにより,大腸T1癌ESD後の再発リスクを層別化できる可能性があると考えられた.