講演情報

[P16-1-5]当院における原発性小腸腫瘍の治療成績

井坂 巴美, 田子 友哉, 林 くらら, 松本 慈, 小坂 亜優, 筋野 博喜, 福島 元太郎, 有働 竜太郎, 笠原 健大, 真崎 純一, 石﨑 哲央, 永川 裕一 (東京医科大学)
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【背景】原発性小腸癌の発生頻度は全消化管癌の0.1~0.3%であり希少癌とされている.そのため,現在のところ取り扱い規約および治療ガイドラインは存在せず,標準的な治療法が確立していないため多くは他の消化管癌に準じた治療が行われている.今回,当院で経験した原発性小腸癌の臨床経過について検討することを目的とした.
 【対象と方法】2006年1月~2022年12月まで当院で原発性小腸癌と診断された12例を対象とし,臨床病理学的背景および治療成績について後方視的に検討した.
 【結果】男性/女性=10/2例,66.5歳(0-87),病変局在の内訳は空腸/回腸=11/1例.発見契機は9例が心窩部痛や貧血などの症状であった.p-stageI/II/III/IV/不明=0/4/2/5/1,根治的切除を受けたのは6例であった.同時性遠隔転移は,肝転移を4例に,腹膜播種を3例に,脾転移を1例に認めた.手術は,2例が腹腔鏡下に行われ,2例は結腸全摘が併行されていた.根治切除後の再発は腹膜播種1例と小腸1例で,小腸再発例はPeutz-Jeghers症候群であった.診断時切除不能あるいは再発後の化学療法では,S-1+CDDP療法,FOLFOX療法,SOX療法などが行われており,OS中央値は5.4か月(0.9-71.3)であった.1例は生後2か月の超低出生体重児症例で,小腸癌による小腸穿孔で腹膜炎手術および人工肛門造設施行され,DICおよび多臓器不全により術後35日で死亡した.また,フォローアップ中に2例は希少癌専門施設へ転医していた.
 【結語】
 原発性小腸癌は,経過はさまざまであるが発見時に進行している症例が多い.その希少性から,今後の治療の標準化のためには一貫したフォローアップ体制や専門施設での症例蓄積が重要であると考えられた.当院で経験した症例について文献的考察を加えこれを報告する.