講演情報
[WS3-4]Crohn病合併した痔瘻に対するseton法の長期成績
中尾 詠一, 小金井 一隆, 小原 尚, 後藤 晃紀, 辰巳 健志, 杉田 昭 (横浜市立市民病院炎症性腸疾患科)
【背景】
Crohn病(以下,CD)に合併した痔瘻は複雑・難治性で,分泌物の増加,疼痛によりQOLを著しく低下させる.外科治療を要する症例が多く,肛門機能温存が図れるseton法が選択されることが多い.本法術後の長期経過について検討した報告は少ない.
【目的】
CDに合併した痔瘻に対しseton法(loose seton)を施行した例の術後長期経過と予後に関連する因子を明らかにする.
【対象と方法】
2009年4月から2014年3月までCDに合併した複雑痔瘻に対してseton法を施行し,10年以上経過観察をしえた51例を対象とした.累積再手術率,累積stoma造設率を求め,seton法再手術もしくはstoma造設を要した症例を予後不良群(A群),それ以外を予後良好群(B群)とし,2群間で性別,初回seton法施行時年齢,CD病型,肛門病変発症から初回手術までの期間,初回手術時肛門所見(primary lesion,secondary lesion,原発巣数,2次口数),術後の生物学的製剤や免疫抑制剤使用有無について比較検討した.
【結果】
5年/10年累積再手術率は60.8%/72.5%,5年/10年累積stoma造設率は22.8%/29.2%であった.A群39例,B群12例であった.初回seton法施行時年齢,性別,肛門病変出現から初回肛門手術施行までの期間は両群で差はなかった.CD病型は,両群で小腸:大腸:小腸大腸型=0/5:7/1:32/6例でB群に小腸型が多かった.
初回seton法施行後の抗TNF-α抗体製剤使用は9:7例(P=0.033)とB群で多かった.肛門所見はprimary lesionのCavitating ulcerやAggressive ulcerationを認めた症例はA:B=18:3例(P=0.32),secondary lesionのAnal strictureもしくはAnovaginal/rectovaginal fistulaを認めた症例は11:2例(P=0.71)であった.
原発巣数は2.0:1.5個(P=0.67),2次口数は共に3個(P=0.84)で,留置したseton数は,2.0:1.5本(P=0.47)であった.B群の中で経過観察期間中にsetonを全て抜去可能であった症例は6例(全体の11.8%)で,抜去完了時期は術後38.5ヶ月(19-92)であった.
【結語】
Crohn病に合併した痔瘻に対するseton法による治療で長期経過が良好な症例は23%程度あったが,再手術を要した例も多かった.術後の抗TNF-α抗体製剤使用は再手術を回避できる可能性があると考えられた.
Crohn病(以下,CD)に合併した痔瘻は複雑・難治性で,分泌物の増加,疼痛によりQOLを著しく低下させる.外科治療を要する症例が多く,肛門機能温存が図れるseton法が選択されることが多い.本法術後の長期経過について検討した報告は少ない.
【目的】
CDに合併した痔瘻に対しseton法(loose seton)を施行した例の術後長期経過と予後に関連する因子を明らかにする.
【対象と方法】
2009年4月から2014年3月までCDに合併した複雑痔瘻に対してseton法を施行し,10年以上経過観察をしえた51例を対象とした.累積再手術率,累積stoma造設率を求め,seton法再手術もしくはstoma造設を要した症例を予後不良群(A群),それ以外を予後良好群(B群)とし,2群間で性別,初回seton法施行時年齢,CD病型,肛門病変発症から初回手術までの期間,初回手術時肛門所見(primary lesion,secondary lesion,原発巣数,2次口数),術後の生物学的製剤や免疫抑制剤使用有無について比較検討した.
【結果】
5年/10年累積再手術率は60.8%/72.5%,5年/10年累積stoma造設率は22.8%/29.2%であった.A群39例,B群12例であった.初回seton法施行時年齢,性別,肛門病変出現から初回肛門手術施行までの期間は両群で差はなかった.CD病型は,両群で小腸:大腸:小腸大腸型=0/5:7/1:32/6例でB群に小腸型が多かった.
初回seton法施行後の抗TNF-α抗体製剤使用は9:7例(P=0.033)とB群で多かった.肛門所見はprimary lesionのCavitating ulcerやAggressive ulcerationを認めた症例はA:B=18:3例(P=0.32),secondary lesionのAnal strictureもしくはAnovaginal/rectovaginal fistulaを認めた症例は11:2例(P=0.71)であった.
原発巣数は2.0:1.5個(P=0.67),2次口数は共に3個(P=0.84)で,留置したseton数は,2.0:1.5本(P=0.47)であった.B群の中で経過観察期間中にsetonを全て抜去可能であった症例は6例(全体の11.8%)で,抜去完了時期は術後38.5ヶ月(19-92)であった.
【結語】
Crohn病に合併した痔瘻に対するseton法による治療で長期経過が良好な症例は23%程度あったが,再手術を要した例も多かった.術後の抗TNF-α抗体製剤使用は再手術を回避できる可能性があると考えられた.