講演情報

[PD4-6]ステント留置を行った閉塞性大腸癌における術前Prognostic nutritional index(PNI)の臨床的意義

白鳥 広志, 出嶋 皓, 中守 咲子, 加藤 博樹, 夏目 壮一郎, 高雄 美里, 中野 大輔, 川合 一茂 (駒込病院)
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【背景】 ESGEのガイドラインではBridge-to-Surgery(BTS)としてステント挿入を行った閉塞性大腸癌に対しては2週間以内の根治術が推奨されている.しかし大腸閉塞に伴った栄養状態不良の症例も多く,早期の手術が術後の合併症の増加に繋がることも懸念される.ステント挿入前後のPrognostic nutritional index(PNI)を指標としたリスク評価を試みた.
 【方法】 大腸ステントを留置後に原発巣切除を行った閉塞性大腸癌119例(cStageIV:39例,cStageIII以下:80例)を対象とした.
 【結果】 28例(24%)にClavien-Dindo grade2以上の合併症を認め(縫合不全:11例,イレウス:9例,SSI:4例,他),周術期死亡例は認めなかった.ステント留置前後のPNIはいずれも術後合併症の発生と相関を認めなかったが,ステント留置後もPNIが回復せずむしろ低下した症例が(Cut-off値-1)69例(58%)あり,この群はPNIの低下がなかった群に比べ有意に術後合併症率が高かった(p=0.012).ステント留置前後のPNI変化値は年齢,性別,Performance Status,併存疾患の有無,癌の進行度と相関しなかったが,ステント留置から手術までの期間が3週間未満の症例ではPNI変化値が-3.2±5.8と期間が長い群の-0.7±6.0と比較しPNIの回復が有意に悪かった(p=0.048).PNI変化値は手術時間,出血量,術式(ストマありorなし)に影響を及ぼさなかったが,PNI低下群は非低下群に比べ有意に術後在院日数が延長していた(12.8±8.1日 vs. 9.3±5.3日,p=0.011).術前因子のうち,ステント留置後のPNI低下のみが術後合併症発生の危険因子であった(オッズ比:3.3,p=0.019).
 予後の解析では,PNI低下群と非低下群における5y-OSに有意差を認めなかった(p=0,26).また,cStageIII以下の症例における5y-DFSも両群で差を認めなかった(p=0.69).
 【結語】BTSとしてのステント留置症例にて栄養不良を認めた場合,積極的な栄養療法の介入を行い,改善が得られた後に根治術を行うことが望ましい.PNIが栄養状態の評価に有用である.