講演情報
[PD6-7]潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術後の回腸嚢肛門(管)吻合部瘻孔の治療と内科外科連携
高橋 賢一1, 羽根田 祥1, 白木 学1, 枡 悠太郎1, 成島 陽一2, 松村 直樹2, 野村 良平2, 齋藤 匠2, 金原 圭吾2, 佐藤 馨2, 榊間 貴滉2, 笹川 佳樹2, 徳村 弘実2 (1.東北労災病院炎症性腸疾患センター, 2.東北労災病院外科)
【背景】当院炎症性腸疾患センターには内科2名,外科2名が在籍しており,治療方針の判断に迷う症例については月1回のミーティング,週1回の術前カンファレンスでの症例検討を行い方針決定している.回腸嚢肛門(管)吻合(IAA,IACA)を行った多くの潰瘍性大腸炎症例をフォローしているが,長期経過の中で吻合部瘻孔を合併することがあり,問題となっている.そこで,IA(C)A術後吻合部瘻孔に対する内科外科の連携を含めた適切な治療戦略を確立することを目的として検討を行った.【対象と方法】2007年~2022年までに当院でIA(C)Aを行ったUC133例中,吻合部瘻孔を合併した6例(4.5%)に加え,同期間内にIA(C)A術後吻合部瘻孔の治療目的に他院より紹介となったUC11例の計17例を対象とし,その術式選択と治療成績について検討した.【結果】17例中4例はseton留置術に加え,生物学的製剤の併用により寛解状態を維持できたが,その他の13例は症状コントロールが困難で回腸ストーマ造設術を要した.ストーマ造設症例のうち,広範な瘻孔形成やクローン病への診断変更などの理由から3例で回腸嚢切断術を行い,3例で回腸嚢空置のまま経過観察となった.一方,3例で回腸嚢肛門再吻合(Redo-IAA)を,4例で経肛門的瘻孔修復術を行いストーマ閉鎖となった.Redo-IAAを行った3例中の1例は瘻孔再燃と難治性回腸嚢炎の合併により回腸嚢切断に至ったが,他2例は長期に肛門機能を温存することができ,うち1例は回腸の多発潰瘍に対し内科でウステキヌマブ投与を行い寛解維持継続中である.瘻孔修復を行った4例のうち2例で瘻孔の再燃を来したが,それぞれ内科でのウステキヌマブ,ベドリヅマブの投与により治癒し,肛門機能を温存できている.これら生物学的製剤の適応と導入時期についてはIBDセンターカンファレンスで検討を行い決定した.最終的に,観察期間の中央値3.7年で,IA(C)A吻合部瘻孔合併例の肛門温存率は59%という成績であった.【結語】IA(C)A術後吻合部瘻孔の治療においては内科外科の連携を密に行い,Redo-IAAや瘻孔修復術などの手術に生物学的製剤を適切に併用することが治療成績向上に寄与する可能性が示唆された.