講演情報

[O12-5]大腸癌周術期における血中cell free DNA量の評価

中村 有貴, 北畑 裕司, 本林 秀規, 竹本 典生, 中井 智暉, 佐藤 公俊, 兵 貴彦, 松本 恭平, 松田 健司, 岩本 博光, 三谷 泰之, 下村 和輝, 上田 勝也, 川井 学 (和歌山県立医科大学第2外科)
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【緒言】手術や外傷等の侵襲により血中cell free DNA(cfDNA)が増加することが知られており,血中cfDNA量は侵襲が生じた直後から数週間で上昇し,その変化は侵襲の程度により異なることが報告されている.しかし,腹腔鏡手術やロボット支援下手術が中心となった現在の大腸癌手術において,周術期にcfDNA量がどのような経時的変化を示すかについては未だ明らかでなく,今回,当科で手術を行った大腸癌症例の血中cfDNA量の変化を測定することした.また,他の消化器癌(食道癌,胃癌,肝臓癌,胆管癌,膵癌)においても同様に周術期のcfDNA量の変化を評価し,他臓器の手術との比較を行った.さらに,周術期のcfDNA量の測定の臨床的意義を評価するため,術後合併症との関連について検討を行った.
 【方法】当科で手術を行った大腸癌症例5例を含む50例の消化器癌症例(食道6例,胃7例,肝臓9例,胆膵23例)において,術前,術後1日目,術後4日目,術後7日目に血液を採取し,Agilent 2100 バイオアナライザを用いてcfDNA量を測定し,その変化を評価した.また,臓器別の周術期のcfDNA量の変化や,cfDNAの変化と術後合併症との関連について検討を行った.
 【結果】大腸癌症例におけるcfDNAの経時的変化としては,術後1日目にcfDNA量は術前よりも増加し,術後4日目でピークを示したのち,術後7日目には減少を認めた.同様の傾向は,食道癌,胃癌,胆膵癌の周術期においても認めたが,肝癌の周術期においては,cfDNA量のピークは術後1日目にみられ,術後4日目,術後7日目にかけて減少した.また,大腸癌を含む消化管癌における周術期のcfDNA量の変化は,胆膵癌や肝癌といった実質臓器と比較し小さかった.術後合併症は大腸癌症例2例を含む7例(縫合不全2例,膵液瘻2例,胆汁瘻2例,無気肺1例)に生じたが,術後合併症を発症した症例においては,術後のcfDNA量の増加が大きかった.
 【結語】大腸癌症例におけるcfDNA量の経時的変化を評価した.少数例での検討であったが,周術期のcfDNAの変化は手術侵襲を反映し,術後合併症を発症した症例においては,術後のcfDNA量の増加が大きくなる可能性が示唆された.