講演情報

[O3-3]クローン病合併痔瘻に対する再生医療ダルバドストロセルの効果

高野 正太, 伊禮 靖苗, 中村 寧, 吉元 崇文, 玉岡 滉平, 辻 順行 (大腸肛門病センター高野病院肛門科)
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【はじめに】クローン病に合併した痔瘻は根治手術の適応ではなく,ドレナージを行った後の各種薬物療法が行われるが,難渋する症例を多く経験する.健康成人の皮下脂肪組織に由来する間葉系幹細胞を単離・培養して得られたヒト脂肪組織由来幹細胞製剤のアルバドストロセルが2022年に保健収載された.当院での使用経験を報告する.
【方法】ダルバドストロセルの本注入から3-4週間前に腰椎麻酔下に瘻管の掻爬および組織生検を行い病理診断にて悪性所見がないことを確認する.注入の際にはまず生理食塩水などで一次口の確認を行う.再度瘻管を掻爬したのち一次口を閉鎖する.当院では吸収糸を用いて4-5針ほど結紮縫合している.一次口周囲にダルバドストロセル2バイアル,瘻管壁近傍にまんべんなく2バイアル注入する.すべての二次口が閉鎖した場合を臨床的寛解とし,50%以上の二次口が閉鎖した場合を改善と定義した.治療前後にCrohn's Anal Fistula Quality of Life Scale(CAFQol)にて生活の質の変化を評価した.
【結果】2022年12月から2024年1月までに7例(男性6例,平均年齢42.0歳)に施行した(平均観察期間13.0か月).一次口数は6人が1つ,1人が2つ,二次口数は3人が2つ,4人が3つであった.注入後2ケ月での臨床的寛解を7例中5例(71.4%)に認めた.すべての症例で50%以上の二次口の閉鎖を認め,改善率は100%であった.2例は全閉鎖後に再発したが,うち1例は再閉鎖後寛解を保っている.CAFQolの平均は治療前55.7から治療後6か月後には28.3と有意差をもって改善した.
【まとめ】難治であるクローン病合併痔瘻に対してダルバドストロセルは高い寛解率と改善率を示し有効と考えられる.全体的に生活の質も改善しており,寛解に至っていない患者においても疼痛や排液は軽減しておりQOLはかなり向上している.今後,長期的経過及びQOL変化についての観察が望まれる.