講演情報
[R9-4]下部進行直腸癌に対する予防的側方リンパ節郭清
小野 智之, 齋藤 達, 伊勢 一郎, 梶原 大輝, 鈴木 秀幸, 唐澤 秀明, 渡辺 和宏, 亀井 尚, 大沼 忍, 海野 倫明 (東北大学大学院消化器外科学)
【背景】
大腸癌治療ガイドラインでは腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にある深達度T3以深の症例を側方リンパ節郭清の適応としている.一方,当院では近年局所進行癌に対してはCRTを施行しており,予防的側方リンパ節郭清症例は少ない.今回当院における術前側方リンパ節転移陰性の下部直腸癌に対する治療成績を検討しその意義を明らかとする.
【方法】
2010年から2023年3月までに当院で原発切除を施行した下部進行直腸癌240例のうち,Stage II/IIIでcT3以深,cN0症例73例を対象として臨床病理学的項目について検討した.
【結果】
年齢中央値は66歳(27-85),男:女=49:22,身長中央値 163.5cm(140.7-181),体重中央値59.8kg(37.5-98.1),BMI中央値 23.1(16.3-33.2)であった.cT3/4a/4b=58/2/11,cN0/1a/1b/2a/2b=40/10/15/5/1,cStage IIa/IIc/IIIb/IIIc=36/4/24/7であった.手術アプローチは開腹/腹腔鏡/ロボット=23/35/13,術前治療ありは39例(54.9%),側方リンパ節郭清は14例(19.7%)に施行していた.
側方リンパ節郭清施行症例(LLND群)においては,術前治療は7例(50%)に施行しており,郭清未施行症例(nLLND群)では術前治療は33例(57.9%)に施行していた.nLLND群では年齢中央値が67歳,LLND群では59.5歳と有意にnLLND群で高齢であった.LLND群,nLLND群のそれぞれの進行度はcStage II/III=5/9と35/22であり有意差を認めなかった.再発については,LLND群で0例,nLLND群で4例(7.0%)であり,有意差を認めなかった.5年無再発生存率は100%と79.5%,5年全生存率は100%と85.9%といずれも有意差を認めなかった.再発部位としては肺が3例,仙骨前面局所再発が1例,側方リンパ節再発1例であったが,側方リンパ節再発の症例は高齢のため郭清省略症例であった.
【考察】
今回当院の治療成績においては側方リンパ節郭清によって再発率に有意差を認めなかったが,やや高い傾向を認めた.しかし,高齢症例も多く,側方リンパ節郭清による神経障害も考慮すると,術前治療を併用することで予防的側方リンパ節郭清を省略することは妥当と考える.
大腸癌治療ガイドラインでは腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にある深達度T3以深の症例を側方リンパ節郭清の適応としている.一方,当院では近年局所進行癌に対してはCRTを施行しており,予防的側方リンパ節郭清症例は少ない.今回当院における術前側方リンパ節転移陰性の下部直腸癌に対する治療成績を検討しその意義を明らかとする.
【方法】
2010年から2023年3月までに当院で原発切除を施行した下部進行直腸癌240例のうち,Stage II/IIIでcT3以深,cN0症例73例を対象として臨床病理学的項目について検討した.
【結果】
年齢中央値は66歳(27-85),男:女=49:22,身長中央値 163.5cm(140.7-181),体重中央値59.8kg(37.5-98.1),BMI中央値 23.1(16.3-33.2)であった.cT3/4a/4b=58/2/11,cN0/1a/1b/2a/2b=40/10/15/5/1,cStage IIa/IIc/IIIb/IIIc=36/4/24/7であった.手術アプローチは開腹/腹腔鏡/ロボット=23/35/13,術前治療ありは39例(54.9%),側方リンパ節郭清は14例(19.7%)に施行していた.
側方リンパ節郭清施行症例(LLND群)においては,術前治療は7例(50%)に施行しており,郭清未施行症例(nLLND群)では術前治療は33例(57.9%)に施行していた.nLLND群では年齢中央値が67歳,LLND群では59.5歳と有意にnLLND群で高齢であった.LLND群,nLLND群のそれぞれの進行度はcStage II/III=5/9と35/22であり有意差を認めなかった.再発については,LLND群で0例,nLLND群で4例(7.0%)であり,有意差を認めなかった.5年無再発生存率は100%と79.5%,5年全生存率は100%と85.9%といずれも有意差を認めなかった.再発部位としては肺が3例,仙骨前面局所再発が1例,側方リンパ節再発1例であったが,側方リンパ節再発の症例は高齢のため郭清省略症例であった.
【考察】
今回当院の治療成績においては側方リンパ節郭清によって再発率に有意差を認めなかったが,やや高い傾向を認めた.しかし,高齢症例も多く,側方リンパ節郭清による神経障害も考慮すると,術前治療を併用することで予防的側方リンパ節郭清を省略することは妥当と考える.