講演情報

[O16-3]当科におけるストーマ造設法の工夫

渡辺 和宏, 鈴木 秀幸, 齋藤 達, 伊勢 一郎, 小野 智之, 梶原 大輝, 唐澤 秀明, 亀井 尚, 大沼 忍, 海野 倫明 (東北大学大学院消化器外科学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【背景】ストーマ造設を困難にする要因として,厚い腹壁(肥満例など),組織の脆弱性(ステロイド使用例など.腸管挙上時の牽引で腸間膜が裂けやすい),腸管浮腫(緊急手術例など.ストーマ翻転が困難)等が挙げられる.これらの症例に対するストーマ造設の工夫を提示する.
 【基本手技】小腸ストーマでは皮膚縁から2.5cmの高さ,結腸ストーマでは1.5cmの高さとなるように設定して運針している.皮膚と筋膜のずれを避けるため,ストーマ造設が確実な症例では,開腹に先立ち腹膜前組織までの剥離をおこなうこともある.筋膜切開は頭尾側方向におこない2横指が余裕を持って通る程度まで開けておく.
 【二連銃式ストーマの選択】一時的ストーマの場合は,通常,ループ式としているが,腹壁が厚い症例や組織が脆弱で腸間膜が裂けやすい症例などでは十分な腸管挙上が困難な場合がある.不十分な挙上では陥没のリスクや,肛門側腸管に腸液が流れて有効なseparationが得られないリスクもある.そのような症例に対して,当科では腸管を完全に離断した二連銃ストーマを選択することがある.口側腸管のみを可及的に挙上し,肛門側は線状縫合機で切離したStapleのedgeを一部開孔し粘液瘻のような形で造設する.ループ式よりも口側腸管のストーマ高が高くできる.本手技は,肛門側腸管のストーマ脱出に対する手術にも応用可能である.腹壁固定のみでは再脱出のリスクがあるが,上記手技で肛門側腸管を小孔とした二連銃式ストーマとすることで,肛門側腸管が物理的に脱出しなくなる.
 【ナメクジ法のストーマ造設への応用】ナメクジ法(slug法)は,ストーマ脱出に対して,50%ブドウ糖液を粘膜に滴下することで浸透圧性に腸管浮腫を改善し,環納を容易にする手技として考案された(Watanabe K. Dis Colon Rectum. 2020).当科では,緊急手術などでの翻転困難な浮腫腸管のストーマ造設にナメクジ法を応用している.腸管内腔に50%ブドウ糖液を注入し,2~3分経つと浸透圧性に腸管の浮腫が改善し,腸壁が軟らかくなり翻転が容易になる.
 【まとめ】ストーマ造設が困難な症例に対しても,手技を工夫することで,適切なストーマ造設を心がけることが重要である.