講演情報

[R8-4]地域中核病院におけるLynch症候群スクリーニングの取り組みと問題点

吉岡 貴裕, 稲田 涼, 常光 良介, 坂本 真也, 八木 朝彦, 井上 弘章, 三村 直毅, 田渕 幹康, 高田 暢夫, 大石 一行, 佐藤 琢爾, 中村 敏夫, 岡林 雄大, 尾崎 和秀, 渋谷 祐一 (高知医療センター消化器外科・一般外科)
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【背景】
Lynch症候群(LS)は最も頻度の高い遺伝性大腸癌でありそのスクリーニング検査は既に保険収載されている.遺伝性腫瘍の拾い上げはがん治療に劣らず重要であり当院でも2022年よりLSスクリーニングを導入した.一方で地方の地域中核病院では対象に高齢者や詳細な家族歴情報の聴取が困難な症例も多く含まれ課題も多い.
【対象と方法】
当院にて2022年4月以降に切除した大腸腺癌原則全例,及び2017年4月より2022年3月に行った大腸悪性腫瘍手術1251例の内,年齢や組織型などでLSの可能性が否定できない症例を対象とした.MSI検査もしくはミスマッチ修復タンパク免疫染色(MMR-IHC)を行い,MSI-HまたはMLH1(-)ではBRAF検査を追加した.遺伝性腫瘍外来推奨症例では遺伝カウンセリング(GC)を提供の上,希望者に遺伝学的検査(GT)実施した.
【結果/考察】
抄録提出時点で529例にスクリーニング検査を実施した.平均年齢69.9歳,女性42.5%,右側結腸癌34.6%,MSI/MMR-IHCは364例/165例であった.全529例中ミスマッチ修復機構に異常ありが49例(9.3%),遺伝性腫瘍外来受診推奨が25例(4.7%)で22例がGC提供済である.22例全例がGTを希望し5例でLS確定(0.9%),VUS1例,散発性大腸癌10例,検査中5例である.原因遺伝子はMLH1,MSH2,MSH6が3,1,1例であった.3例で血縁者診断を行い1例がLSであった.1例ではGT希望があったもののGT採血施行前に永眠され,施行が困難となった.死亡症例は来談時90歳の女性で,MLH1(-)/PMS2(-)パターンのdMMR,BRAF野生型で改定ベセスダ基準に2項目合致していた.
【結語】
地方の地域中核病院であるLSスクリーニングを導入でき,血縁者診断やサーベイランスにつなげられつつある.一方で対象者の年齢は69.9歳と高齢で,GT希望患者の検査前死亡などの課題にも直面している.本発表ではその後の症例集積を含め当院でのスクリーニング結果及び今後の展望や課題について報告する.