講演情報

[P14-1-4]80歳以上の高齢者大腸癌手術における術前サルコペニア,低栄養の予後への影響

水元 理絵1,2, 三吉 範克1,2, 関戸 悠紀1, 竹田 充伸1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 荻野 崇之1, 植村 守1, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学, 2.大阪国際がんセンターがん医療創生部)
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担癌患者において,術前のサルコペニアや低栄養状態は術後合併症や予後に影響を与えることが報告されており,大腸癌においても多くの報告を認める.また,大腸癌は依然全国がん罹患率1位を示し,超高齢化社会に伴い,高齢者が外科的治療を受ける機会も今後更に増加していくことが予測される.本研究では,今後症例数の増加が見込まれる80歳以上の高齢大腸癌症例に対象を絞り,術前のサルコペニアをPsoas Muscle Mass Index(PMI),栄養状態をGNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)を用いて評価し,高齢者大腸癌手術予後との関連性を検討した.
対象を2004年~2018年に当院にて根治切除が施行された80歳以上の大腸癌(直腸癌を含む)症例とし,後ろ向きに検討を行った.PMI=第3腰椎レベルの腸腰筋断面積(cm2)÷身長2(m2),GNRI=1.487×血清Alb値+41.7×術前体重/理想体重で算出し,術後生存期間,再発との関連性を検証した.カプラン・マイヤー曲線にて生存時間分析を行い,低PMI群は高PMI群と比較し,術後生存期間が有意に短くなることが示された.また,術後生存期間について,Cox比例ハザードモデルを用いて単変量解析を行い,性別,PMI,腫瘍深達度,静脈侵襲等で有意な差を認めた.多変量解析においては,高PMI群と比較し,低PMI群でのリスクの上昇を認めた.また,サルコペニア群内でも術前低栄養を伴う群に着目すると,低GNRIを伴うサルコペニアは独立した予後不良因子(P=0.0032)であった.
以上から,80歳以上の高齢大腸癌手術症例において,術前サルコペニア,特に低栄養を伴うサルコペニアは簡便に用いることができる有用な予後予測因子になると考えられた.