講演情報
[WS3-2]肛門初発クローン病の診断と治療戦略
高野 竜太朗, 指山 浩志, 堤 修, 赤木 一成, 小池 淳一, 安田 卓, 川村 敦子, 赤井 崇, 中山 洋, 鈴木 綾, 城後 友望子, 黒崎 剛史, 佐々木 峻, 浜畑 幸弘 (辻仲病院柏の葉)
【はじめに】クローン病関連の肛門病変(Perianal Crohn's disease:PCD)は肛門狭窄や発癌のリスクであり適切な時期にBio等の内科的治療を導入することが肝要である.腸管病変を伴わない肛門初発のCDでは確定診断が遅れることが多く如何に早期にCDの発症を予測,診断できるかが課題となっている.【目的】肛門初発CD患者の臨床像と適切な初期治療を検討する.【対象・方法】2013年1月から2024年3月までに当院を受診した症例を対象とした.初診時の主訴が肛門病変(肛門周囲膿瘍または痔瘻)であり,初診時内視鏡所見で確診に至らず,後にCDと確診された症例を肛門初発例と定義しRetrospectiveに検討した.【結果】肛門初発例は19例,平均21.4±6.6歳,単純痔瘻2例,複雑痔瘻16例(1例は不詳)であった.肛門所見はCavitating ulcer 2例,浮腫状皮垂2例,Edematous pile 0例であり,裂肛は4例(1時9時 1例/6時12時 2例/6時単独 1例)であった.手術所見はI 1例/IILs単独 1例/IILc単独 2例/IIの多発(2~3カ所)5例/IIIB 2例/不明 8例であり,MRI(n=8)と肛門エコー(n=11)の所見と比較すると後者の正診率が高かった.初回下部消化管内視鏡では16例にびらんを認めた.CD確診までの平均期間(n=19)は476.4±341.5日で,10歳代(n=8)の平均632.3±340.2日に対して20歳以上(n=11)では平均363.0±308.6日であり(p=0.09),10歳代でCD確診までの期間を要す可能性が考えられた.肛門初発例では全例確診前に手術が行われ,後にBioが導入されていた.術式は切開排膿のみ5例/Loose setonによるドレナージ 7例/Lay open 7例であり,Lay open例(n=7)では平均511±357.2日後にCDを確診された.3例はBio導入前に肛門病変が治癒し3例はBio導入から69~98日後に治癒した.軽度肛門狭窄を1例認めたが他は予後良好であった.【結語】若年,大腸の炎症所見,一般的なクローン病に特徴的な肛門病変,肛門エコーで多発痔瘻,痔瘻と併存する多発裂肛などがみられた場合,一定期間後にPCDの診断に至る可能性がある.早期にCD確診に至らない場合,適応を絞れば根治術により必ずしも肛門予後は悪化せず,難治例でも早期にBioを導入することで肛門病変のコントロールが可能となることが考えられる.