講演情報

[P14-1-2]高齢者のpStage I/II/III結腸癌におけるTextbook oncological outcome達成率について

百瀬 ゆずこ, 岡林 剛史, 正源 勇朔, 森田 覚, 茂田 浩平, 北川 雄光 (慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器))
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【背景】Textbook oncological outcome(TOO)は,理想的な手術及び術後経過の達成を示すquality indicatorの一つである.大腸癌のTOOは,初診から6週間以内の治療介入,根治的切除,郭清リンパ節(LN)≧12個,予定されていないストーマ増設無し,Clavien-Dindo分類(CD)≧IIIaの合併症無し,の5項目から成っており,TOO達成により良好な予後が期待できると報告されている.本邦は世界一の超高齢化社会であり,今後益々高齢の割合が上昇することが予想される.本研究では,pStage I/II/III結腸癌患者を対象に,TOO達成率及びその項目と年齢との相関について検討することを目的とした.
 【方法】2012年から2020年に当院で手術を施行したpStage I/II/III結腸癌765例を対象とした.TOOの5項目を全て達成した場合をTOO達成(TO)群,1つでも満たさなかった場合をTOO未達成(nTO)群とした.85歳未満,85歳以上の2群において,年齢とTOOの各項目との相関について,統計学的解析を行なった.
 【結果】85歳未満は690例,85歳以上は75例であった.対象患者765例において,494例(64.6%)でTOOが達成されていたが,85歳未満で457例(66.2%),85歳以上で37例(49.3%)がTOOを達成できていた[p=0.004].TOOの各項目と年齢との関連について検討したところ,85歳以上の群では「6週間以内の治療介入」が有意に達成できていなかった[85歳未満 77.5% vs. 85歳以上 66.7%,p=0.035].6週間以内に治療介入がされなかった理由としては,心肺に併存疾患を有し,耐術能評価に時間を要する症例が9例(36%)と最も多かった.
 【結語】85歳以上の高齢者では,85歳未満と比較して,TOOをできない傾向があった.また85歳以上の高齢者におけるnTO群では,「6週間以内の治療介入」が達成できない症例が多く,術前検査を早急に行い治療介入を早くすることで,その予後を改善する可能性が示唆された.