講演情報

[VPD3-2]大腸癌術後縫合不全に対する腹腔鏡下人工肛門造設術の検討

永井 俊太郎, 新川 智彦, 大山 康晴, 櫻井 翼, 西原 一善, 中野 徹 (北九州市立医療センター)
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(はじめに)
大腸癌手術における重大な合併症のひとつに術後縫合不全が挙げられる.近年の手術手技の向上や自動吻合器・縫合器の改良により安全に行われるようになってきてはいるものの,術後縫合不全は未だ解決された問題ではなく,発症後に速やかで適切な治療が行われなければ重篤な経過をたどることもある.術後縫合不全にたいする治療法のひとつとして人工肛門造設術が挙げられる.初回手術が腹腔鏡手術で行われることが多くなっており,人工肛門造設術も腹腔鏡下に施行されることが多くなっている.
今回,当施設で行った術後縫合不全に対する腹腔鏡下人工肛門造設術について検討する.
(対象・方法)
2014年1月から2023年12月までに当科で大腸癌術後縫合不全に対し人工肛門造設術を施行した患者の周術期成績を後方視的に検討し,手術手技を供覧する.
(結果)
大腸癌手術症例は1661例.縫合不全発症症例は95例であった.このうち,48例は保存的加療を行い,人工肛門造設術等の外科的処置を行ったのは47例であった.術式は回腸人工肛門造設が37例,ハルトマン手術が5例,ドレナージのみが3例,その他2例であった.開腹手術(開腹移行含む)が12例,腹腔鏡手術が31例,人工肛門腸管挙上のみが4例であった.手術時間は開腹手術122分(50-256),腹腔鏡手術73分(26-292),人工肛門腸管挙上のみ30分(24-49),出血量は開腹手術30g(1-1720),腹腔鏡手術5g(1-250),人工肛門腸管挙上のみ1g(1-5)であった.
(手術手技)
腹腔鏡手術後の人工肛門造設では初回手術時のポート孔を利用して行うことが多かった.また,人工肛門造設部位にカメラポートを挿入することにより腹壁破壊を最小限に抑えられた.腹腔内全体を観察することにより,洗浄・ドレーン留置を効果的に行えた.反面,癒着等で視野が確保できない場合には腹腔鏡手術の完遂ができないことがあった.また,縫合不全部の修復等の操作は難しいと思われた.
(考察)
大腸癌術後縫合不全に対する腹腔鏡下人工肛門造設術は安全で有用な低侵襲手術手技であり,選択肢の一つと考える.