講演情報

[O7-4]他臓器浸潤結腸癌に対する腹腔鏡下手術の術後成績の検討

高橋 宏光, 安藤 祐二, 幸地 彩貴, 十朱 美幸, 村井 勇太, 入江 宇大, 百瀬 裕隆, 土谷 祐樹, 雨宮 浩太, 茂木 俊介, 塚本 亮一, 本庄 薫平, 盧 尚志, 高橋 里奈, 河合 雅也, 石山 隼, 杉本 起一, 小島 豊, 冨木 裕一, 坂本 一博 (順天堂大学下部消化管外科)
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【はじめに】近年,局所進行大腸癌に対しても鏡視下手術が広く行われるようになってきている.当院では,他臓器浸潤大腸癌と診断した症例では浸潤臓器が切除可能であれば手術を先行し,難しければ術前治療としている.今回,c/sT4b結腸癌に対する鏡視下手術例について,術後の短期成績ならびに長期成績に関して後方視的に検討したので報告する.
【対象】2010年1月から2022年4月までにc/sT4bと診断し鏡視下で他臓器合併切除を施行した結腸癌症例(65例)を対象とした.年齢の中央値は65歳(38~89歳)で,男性(34例),女性(31例)であった.術前治療を施行したのは3例(4.6%)であった.
【結果】合併切除した臓器・組織は,腹壁・骨盤壁(22例),小腸・大腸(15例),腹膜・後腹膜(11例),膀胱(12例),血管(4例),子宮・付属器(8例)であった.手術時間は303分(154-671分)で,出血量は45ml(5-810ml)であった.開腹移行症例は12例(18.5%)であった.術中合併症は4例(6.2%)にみられたがすべて鏡視下に処置を行いこれが原因で開腹移行になった症例はなかった.術後合併症は8例(12.3%)に認められ,腹腔鏡完遂症例が5例(9.4%),開腹移行症例が3例(25%)で開腹移行症例の方が高率であった.術後合併症はいずれもGrade-2(CD分類)で,再手術例はなかった.病理学的診断でpT4bは26例(40%)で,pStageは,S-II(a/b/c):21例,S-III(a/b/c):20例,S-IV(a/b):12例であった.R0切除は64例(98.5%)に施行され,膀胱浸潤の1例のみR1切除であった.
無再発生存期間(RFS)に関して,StageII/III間で有意差は認められなかった.また,腹腔鏡症例と開腹移行症例間,ならびにpT4b症例とそれ以外の症例間でも,RFSに有意差はみられなかった.また,StageII・III症例のRFSについて,性別(p=0.01),術後補助化学療法(p=0.0003)で有意差がみられた.腹膜播種またはポート部再発をきたしたのは4例であった.
【結語】他臓器浸潤症例においても安全に腹腔鏡手術を施行することができた.他臓器浸潤が疑われる局所進行結腸癌では,術中にT4b症例を正確に見分けることは難しく,癌遺残の可能性があれば開腹移行を検討すべきと考えられた.