講演情報
[PD6-6]潰瘍性大腸炎術後合併症発生リスク因子としてのGlasgow Prognostic Scoreの意義
大北 喜基1, 川村 幹雄1, 今岡 裕基1, 志村 匡信1, 北嶋 貴仁2, 奧川 喜永2, 松下 航平1, 安田 裕美1, 小池 勇樹1, 吉山 繁幸1, 大井 正貴1, 問山 裕二1 (1.三重大学医学部消化管・小児外科, 2.三重大学医学部附属病院ゲノム診療科)
【背景】Glasgow Prognostic Score(GPS)は血清アルブミン(Alb)値血清とC-reactive protein(CRP)を組み合わせた指標であり,多くの癌種での予後や術後感染性合併症との関連について報告されている.これまで潰瘍性大腸炎(UC)手術においてもGPS高値が術後合併症発生に関連することが報告されているものの,十分に検討されているとは言えない.
【目的】UCに対する大腸全摘・回腸嚢肛門吻合・回腸人工肛門造設術(2期分割手術IPAA)においてGPSならびに独自にAlbおよびCRPのカットオフ値を変更して作成したmodified GPS(mGPS)が回腸嚢周囲感染症(peri-pouch sepsis:PPS)のリスク因子になるかどうかについて検討した.
【方法】当科において2005年1月から2021年12月までに2期分割IPAAが施行された15歳以上のUC患者205例を対象とした.術前臨床学的因子および術前血液データを用いてPPS発生のリスク因子ついて解析した.GPSでのAlbおよびCRPのカットオフ値は既報に従いそれぞれ3.5g/dl,1.0mg/dlとした.mGPSでのAlbおよびCRPのカットオフ値はPPSに対するROC曲線を用いてそれぞれ3.0g/dl,0.8mg/dlと決定した.【結果】PPSは14例に認められた.PPS発生群に関わるリスク因子の検討では,単変量解析にて術前1か月累積プレドニゾロン(PSL)量225mg以上およびヘモグロビン7.4g/dl未満がリスク因子として抽出された(P=0.0050,0.0020).GPS2点およびmGPS2点は共にPPS発生のリスク因子であったが,mGPS2点の方がより有意なリスク因子であった(P=0.013およびP=0.0012).術前1か月累積PSL量,ヘモグロビン値,mGPSを用いて多変量解析を行うと,術前1か月累積PSL量225mg以上およびmGPS2点は独立したPPS発生のリスク因子であった(P=0.037およびP=0.043).
【結論】UCに対する2期分割手術IPAAにおいてmGPSは,従来のGPSよりも有意にPPS発生のリスク評価に有用である可能性が示唆された.UC手術において術前1か月累積PSL量高値またはmGPS2点であれば,第1期目手術で回腸嚢手術を回避することにより,PPS発生リスクが低下する可能性が示唆された.
【目的】UCに対する大腸全摘・回腸嚢肛門吻合・回腸人工肛門造設術(2期分割手術IPAA)においてGPSならびに独自にAlbおよびCRPのカットオフ値を変更して作成したmodified GPS(mGPS)が回腸嚢周囲感染症(peri-pouch sepsis:PPS)のリスク因子になるかどうかについて検討した.
【方法】当科において2005年1月から2021年12月までに2期分割IPAAが施行された15歳以上のUC患者205例を対象とした.術前臨床学的因子および術前血液データを用いてPPS発生のリスク因子ついて解析した.GPSでのAlbおよびCRPのカットオフ値は既報に従いそれぞれ3.5g/dl,1.0mg/dlとした.mGPSでのAlbおよびCRPのカットオフ値はPPSに対するROC曲線を用いてそれぞれ3.0g/dl,0.8mg/dlと決定した.【結果】PPSは14例に認められた.PPS発生群に関わるリスク因子の検討では,単変量解析にて術前1か月累積プレドニゾロン(PSL)量225mg以上およびヘモグロビン7.4g/dl未満がリスク因子として抽出された(P=0.0050,0.0020).GPS2点およびmGPS2点は共にPPS発生のリスク因子であったが,mGPS2点の方がより有意なリスク因子であった(P=0.013およびP=0.0012).術前1か月累積PSL量,ヘモグロビン値,mGPSを用いて多変量解析を行うと,術前1か月累積PSL量225mg以上およびmGPS2点は独立したPPS発生のリスク因子であった(P=0.037およびP=0.043).
【結論】UCに対する2期分割手術IPAAにおいてmGPSは,従来のGPSよりも有意にPPS発生のリスク評価に有用である可能性が示唆された.UC手術において術前1か月累積PSL量高値またはmGPS2点であれば,第1期目手術で回腸嚢手術を回避することにより,PPS発生リスクが低下する可能性が示唆された.