講演情報
[PD9-6]チオプリン製剤投与中の炎症性腸疾患患者における6-TGN,6-MMP濃度に影響を与える因子:多変量ANOVAによる解析(第4報)
愛澤 正人1, 橋本 沙優里2, 渡邊 早百合2, 和田 淳2, 大塚 充2, 中島 勇貴2, 澁川 悟朗2, 冨樫 一智1 (1.福島県立医科大学会津医療センター小腸大腸肛門科学講座, 2.福島県立医科大学会津医療センター消化器内科学講座)
【目的】炎症性腸疾患の治療薬であるチオプリン製剤は,代謝産物である6-thioguanine nucleotides(6-TGN)により治療効果を発揮し,代謝経過中に生成される6-methylmercaptopurine(6-MMP)は肝障害などの有害事象を引き起こす.これまでにアロプリノールと時間依存型5ASAがチオプリン代謝に関与することが解明されているが,他の治療薬・患者背景の関与については明らかではない.本研究では,6-TGNと6-MMPの細胞内濃度に影響する因子について検討した.【方法】2013年5月より2021年10月までに炎症性腸疾患のためチオプリン製剤(AZAまたは6-MP)を投与中の患者40名(潰瘍性大腸炎 28・クローン病12;男33・女7;年令中央値44歳 四分位30-53;軽症33・中等症7;NUDT15 ARG/ARG 36・ARG/CYS 4)を対象とした.high-performance liquid chromatography法により,6-TGN濃度及び6-MMP濃度は計128回の測定が行われ,解析対象とした.患者因子や併用薬物による影響を検討するために,6-TGNと6-MMP濃度は対数変換し,その影響因子を多変量ANOVAにより解析した.【結果】6-TGNと有意な関係を認めたのは,NUDT15遺伝子多型(p=0.0067),アロプリノール併用(p=0.0017)であり,年齢(p=0.88),性別(p=0.49),疾患(p=0.26),病勢(p=0.98),時間依存型5ASA(p=0.79)・ステロイド(p=0.21)・生物学的製剤(p=0.93)の併用,チオプリン高用量(>50mg/日,p=0.15)は有意な影響因子ではなかった.なお,6-TGNはNUDT15遺伝子多型(ARG/CYS)例で有意に低かったが,チオプリン用量や種類との関連はなかった.6-MMPと有意な関係を認めたのは,年令(p=0.0011),アロプリノール併用(p<0.0001),時間依存型5ASAの併用(p<0.0001),チオプリン高用量(p<0.0001)であった.40歳以上で6-MMP濃度が高かったが,チオプリン投与量が関係していると考えられた(高用量例:40歳未満0/51,40歳以上23/77,p<0.001).【結論】6-TGN濃度はアロプリノール併用の影響を受けたが,時間依存型5ASA製剤を含めた他剤併用の影響はなかった.6-MMP濃度はアロプリノールと時間依存型5ASAの併用,チオプリン高用量に強く影響された.