講演情報

[O24-6]低位筋間痔瘻に対する外科手術

岡田 大介, 佐原 力三郎, 鹿野 颯太 (社会医療法人財団仁医会牧田総合病院肛門病センター)
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【背景】低位筋間痔瘻手術では根治性と機能温存とを兼ね備えた術式を行う必要がある.我々が考える低位筋間痔瘻手術のポイントは,①二次瘻管に及ぶ感染巣を周囲の外括約筋を温存しつつ可及的に切除またはドレナージすること,②deep cryptを形成する内肛門括約筋の硬化を改善しつつ,肛門管内からの交通を低侵襲かつ確実に遮断することである.これらを踏まえ当院では低位筋間痔瘻に対して皮下瘻管切離・内括約筋切開法(以下SIFT・IS法)を行っている.
 【目的】当院における低位筋間痔瘻に対する手術法と治療成績を示し,その有用性について検討する.
 【対象と方法】2020年4月から2023年9月までに当院で施行した単発低位筋間痔瘻手術症例のうち,4ヵ月以上経過観察しえた症例(4ヵ月未満で治癒した症例を含む)200例を対象とし,診療録を元に後ろ向きに検討した.クリプト以外を原発口とする症例,炎症性腸疾患合併例は除外した.
 【術式の選択】原発口の位置に関わらずSIFT・IS法を第一選択とするが,瘻管の走行が短く浅い症例,原発口に大きな欠損がある症例や膿瘍を合併し瘻管が形成されていない症例では他の術式を選択している.
 【結果】男女比165:35,平均年齢42.7歳であった.痔瘻の型はIILS124例,IILC76例,原発口は前側方112例,後方88例であった.
 術式はSIFT・IS法169例(84.5%),切開開放術17例(8.5%),肛門保護術6例(3%),肛門上皮温存・瘻管開放術5例(2.5%),tight seton法3例(1.5%)であった.IILSではSIFT・IS法103例(83.1%),切開開放術13例(10.5%),IILCではSIFT・IS法66例(86.8%),切開開放術4例(5.3%)であった.痔瘻の型別では,治癒期間中央値はIILS52日,IILC67日,再手術はIILS5例(4.0%),IILC6例(7.9%)とIILSの方がいずれも良好な成績であった.一方術式別では,治癒期間中央値はSIFT・IS法54.5日,切開開放術52日と差が無く,SIFT・IS法の再手術例11例(6.5%)は前側方7例,後方4例であった.
 【結語】SIFT・IS法は原発口の位置を問わず,IILS,IILC両タイプに対して一定の根治性を保ちつつ早期治癒が望める術式だが,根治性を高めるためにはさらなる検討が必要であると思われた.