講演情報

[P17-2-5]腸重積をきたし肛門から脱出したS状結腸癌の1例

竹原 朗, 倉田 徹, 渡辺 和英, 芝原 一繁 (富山赤十字病院外科)
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症例は50歳代女性,来院2週間前より時に排便時出血を認めていた.下腹部痛とともに便意を認め,いきんだところ下血と肛門からの腫瘤脱出を自覚し当院救急外来を受診した.身体所見では腹部は軽度張っているが軟,肛門から5cm大の腫瘤と腸管脱出を認めた.
腹部CT検査で直腸の重積所見を認めたが先進部は肛門から脱出し撮像範囲外であった.腫瘤と腸管を用手的還納後に外来での精査を計画したが,帰宅後もすぐに腫瘤の脱出をきたすため入院で精査を行った.大腸内視鏡検査では挿入時に直腸Raに内腔を占拠し重積をきたした1型腫瘍を認めたが,送気で重積は徐々に整復され腫瘍は肛門縁から25cmのS状結腸が首座であった.腫瘍部の生検結果はtub2であった.胸腹部造影CT検査でも直腸内に重積した40mm大の腫瘤状壁肥厚を認めたが,明らかな領域リンパ節腫脹や肝転移・腹膜播種を疑う所見は認めなかった.経過で腫瘍の還納が困難となり常時肛門から脱出するようになり口側結腸の拡張が増悪してきたため準緊急で手術を施行した.腹腔鏡下に5ポートで手術を開始,用手的に腫瘍を直腸内に還納後に術中内視鏡下に重積の整復を試みたが困難であった.鉗子での牽引のみでの整復も困難であったため,愛護的に肛門からsizerを挿入し腫瘤を口側に押しつつ鉗子補助下でHutchinson手技を行ったところ完全な整復には至らなかったが腫瘍は岬角レベルの直腸まで還納された.同部位にクランプ鉗子をかけ肛門側への脱出を防ぎ肛門側を切離可能とした上で型どおりD3郭清を伴うS状結腸切除術を施行,脾弯曲の受動も行いDSTで吻合した.術後経過に大きな問題はなく患者は術後14日目に退院した.切除した腫瘍は病理組織学的にpT3(SS)N1aM0 stageIIIbでありcapecitabine内服による補助化学療法を半年施行後,現在まで明らかな再発なく経過観察されている.
今回,腸重積をきたし肛門まで脱出したS状結腸癌の1例を経験した.本症例はsizer併用でHutchinson手技を行ったところ肛門側切除ラインを確保することができ腹腔鏡下に切除することが可能であった.腸重積をきたし肛門脱出をきたした大腸癌症例について,若干の文献的考察を加え報告する.