講演情報
[WS2-4]炎症性腸疾患に対する低侵襲手術の取り組みとその成績
船越 薫子, 品川 貴秀, 江本 成伸, 岡田 聡, 舘川 裕一, 永井 雄三, 阿部 真也, 松崎 裕幸, 金子 建介, 横山 雄一郎, 室野 浩司, 佐々木 和人, 野澤 宏彰, 石原 聡一郎 (東京大学腫瘍外科)
【背景】近年,潰瘍性大腸炎(UC)の外科治療においても腹腔鏡下手術やロボット支援下手術といった低侵襲手術が積極的に行われているが,その適応や治療成績は施設によって異なる.
【目的】当科のUC手術症例を解析し,UCに対する適応に応じた低侵襲手術の有用性や安全性を明らかにする.
【対象・方法】2010年1月から2023年12月に当科にて手術を行ったUC症例107例を対象として解析を行い,患者背景や治療成績を比較した.鏡視下手術に関しては,治療適応として炎症・難治例(Inflammation:I群)と悪性腫瘍合併例(UC associated neoplasia:UCAN群)に分類し,それぞれ術後成績に関与する因子を探索した.
【結果】
手術症例において初回手術が開腹であったのは21例,鏡視下であったのは86例(ロボット12例)であった.手術時年齢中央値は49歳(19-83歳),男性76例,女性31例であった.
手術適応は炎症・難治例が開腹群で有意に多く(15例(71.4%)対33例(38.4%)(p=0.0076)),緊急手術が開腹群で多かった(17例(81.0%)対17例(19.8%)(p<0.001)).
鏡視下86例の中でI群33例(男性24例,女性9例),UCAN群53例(男性38例,女性15例)であった.I群では大腸全摘術2例(回腸嚢肛門(管)吻合術(IPAA)1例,永久回腸人工肛門造設術(TPC)1例),結腸亜全摘術30例,その他1例であり,UCAN群では大腸全摘術51例(IPAA41例,TPC10例),その他2例であった.I群とUCAN群において出血量,手術時間はI群で少なく(76ml 対 264ml:p=0.0055,309分 対 591分:p<0.001),術後在院日数や合併症率に有意差は認めなかった.鏡視下手術症例全体において合併症の有無を目的変数として,性別,年齢(60歳以上と未満),罹病期間(30年以上と未満),生物学的製剤使用,ステロイド使用10000mg以上投与,手術適応に関して多変量解析を行ったがいずれも有意差を認めなかった.
【結語】
鏡視下手術は特にI群において少ない出血量で施行可能だった.また手術適応による合併症率に有意差は認めなかったことに加え,罹病期間,生物学的製剤やステロイド使用の有無も術後合併症のリスク因子とならず,鏡視下手術を安全に施行できる可能性が示唆された.
【目的】当科のUC手術症例を解析し,UCに対する適応に応じた低侵襲手術の有用性や安全性を明らかにする.
【対象・方法】2010年1月から2023年12月に当科にて手術を行ったUC症例107例を対象として解析を行い,患者背景や治療成績を比較した.鏡視下手術に関しては,治療適応として炎症・難治例(Inflammation:I群)と悪性腫瘍合併例(UC associated neoplasia:UCAN群)に分類し,それぞれ術後成績に関与する因子を探索した.
【結果】
手術症例において初回手術が開腹であったのは21例,鏡視下であったのは86例(ロボット12例)であった.手術時年齢中央値は49歳(19-83歳),男性76例,女性31例であった.
手術適応は炎症・難治例が開腹群で有意に多く(15例(71.4%)対33例(38.4%)(p=0.0076)),緊急手術が開腹群で多かった(17例(81.0%)対17例(19.8%)(p<0.001)).
鏡視下86例の中でI群33例(男性24例,女性9例),UCAN群53例(男性38例,女性15例)であった.I群では大腸全摘術2例(回腸嚢肛門(管)吻合術(IPAA)1例,永久回腸人工肛門造設術(TPC)1例),結腸亜全摘術30例,その他1例であり,UCAN群では大腸全摘術51例(IPAA41例,TPC10例),その他2例であった.I群とUCAN群において出血量,手術時間はI群で少なく(76ml 対 264ml:p=0.0055,309分 対 591分:p<0.001),術後在院日数や合併症率に有意差は認めなかった.鏡視下手術症例全体において合併症の有無を目的変数として,性別,年齢(60歳以上と未満),罹病期間(30年以上と未満),生物学的製剤使用,ステロイド使用10000mg以上投与,手術適応に関して多変量解析を行ったがいずれも有意差を認めなかった.
【結語】
鏡視下手術は特にI群において少ない出血量で施行可能だった.また手術適応による合併症率に有意差は認めなかったことに加え,罹病期間,生物学的製剤やステロイド使用の有無も術後合併症のリスク因子とならず,鏡視下手術を安全に施行できる可能性が示唆された.