講演情報

[O15-4]当院における高齢者と超高齢者T1b大腸癌の治療成績の検討

武田 和, 團野 克樹, 深田 唯史, 吉村 弥緒, 山本 慧, 東口 公哉, 野口 幸蔵, 高畠 弘幸, 豊田 泰弘, 中根 茂, 平尾 隆文, 岡 義雄, 関本 貢嗣 (箕面市立病院外科)
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【背景】2023年9月時点で,我が国の65歳以上人口は3623万人で,総人口に占める割合は29.1%と過去最高を更新している.高齢者は,臓器予備能の低下や複数の併存疾患を有する場合も多く,治療方針については慎重な検討が必要になる.
【目的】当院における高齢者と超高齢者T1b大腸癌患者の背景因子と臨床病理学的特徴と予後について,後方視的に検討した.
【対象】2011年から2023年9月までに,当院で初発大腸癌に対して内視鏡的あるいは外科的に切除を施行した症例のうち,病理組織学的にpT1bと診断された128例を対象とした.大腸の多発癌の患者,重複癌の患者は除外した.また,日本老年学会ならびに日本老年医学会での定義に基づき,准高齢者(65~74歳),高齢者(75~89歳),超高齢者(90歳~)とした.
【結果】全症例の年齢中央値は69歳(27-94歳)で,高齢者が36例(28.1%),超高齢者が4例(3.1%)であった.内視鏡的切除を60例(46.9%)に施行し,そのうち47例で追加腸切除を行い,13例で経過観察とした.内視鏡的切除症例は全例で垂直断端陰性であった.外科的切除を行った115例のうち,リンパ節転移陽性は12例(10.4%)であり,リンパ節転移のリスク因子として,リンパ管侵襲陽性が挙げられた.なお,リンパ節転移リスク因子が全て陰性の57例において,リンパ節転移陽性は1例(1.8%)のみで,再発を認めなかった.
術前Hb値の中央値は,高齢者群/超高齢者群で,13.6/10.6 g/dLと超高齢者群で有意に貧血を認めた(p=0.0265).術前の小野寺の予後栄養指数の中央値は,高齢者群/超高齢者群で,49.0/42.3と両群間に有意差は認めなかった(p=0.1091).C-D分類 grade III以上の術後手術関連合併症は,両群とも認めず.術後在院日数の中央値は,両群とも8日で有意差を認めず(p=0.3608).術後再発は,両群とも認めず.
【結語】症例数が少なく単施設の研究ではあるが,高齢者と比較し,超高齢者T1b大腸癌に対する切除は,短期および長期治療成績に有意な差を認めなかった.年齢ではなく,併存疾患やADLや栄養状態なども合わせてリスク評価をしたうえで,治療適応を慎重に判断すべきと思われた.今後もさらに症例を蓄積しての検討が必要である.